日本代表を“マンC風”にしてみた 山根や旗手はカンセロ・ロールにうってつけ、冨安をウォーカーに寄せる手も

日本代表【写真:(C) JFA】
日本代表【写真:(C) JFA】

【識者コラム】偽化の意味はゴール前に集約されている

 おそらく現在もっとも先進的なチームの1つがマンチェスター・シティだろう。

 ジョアン・カンセロの「カンセロ・ロール」が象徴的だ。左サイドバック(SB)かと思えば、いろんな場所でプレーしている。究極の「偽SB」である。昨季、これを見た時は凄い選手がいるものだなと思ったが、いつのまにか右SBのカイル・ウォーカーも「偽」になっていた。

 そうかと思えば、センターフォワード(CF)は日替わりのように人選が変わる。セルヒオ・アグエロがいなくなって本格派CFがいないという事情もあるが、アグエロがいた時からすでにCFは「偽」だった。ベルナルド・シウバ、ケビン・デ・ブライネ、リヤド・マフレズ、フィル・フォーデンなどMF、FWのほとんどが「偽9番」に起用されていて、もう誰でもいいようだ。

 こうした偽化の意味はゴール前に集約されている。

 十八番の鋭いロークロスが放たれた時、ペナルティーエリアにはだいたい4人が突っ込んでいく。ボールは1つとはいえ守備側は的が絞りにくい。こぼれ球を拾われる確率も高くなる。ゴールの1対1で圧倒的なCFを持たないシティが編み出した、一種の人海戦術である。

 4人をボックスに送り込むための保険が偽SBだ。敵陣に攻め込んだ時、カンセロやウォーカーが、アンカーのロドリと並んで3人のラインを形成することで、相手のクリアボールの回収、カウンターアタックに対しての壁、さらに展開が詰まった時のボールの預けどころとして機能している。

 攻め込んだ時のシステムは2-3-5。そして、シティの凄みはアタックラインの5人と2列目の2人(偽SB)の入れ替わりが自由自在というところだ。GK、CB、ロドリの4人以外はもう全部「偽」という趣なのだ。

 正直、サッカーはここまで来ちゃったんだなと思う。ただ、ここでふと考えた。日本代表だってその気になればシティ方式はできるのではないかと。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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