シュツットガルト伊藤洋輝がスタメン起用され続ける理由 数字では測れない“左足の価値”

パス、1対1のデュエルで試合ごとに成長

 伊藤はボールを持つと遠くまで見通す。相手守備の守りにくいところを素早く見つけ出し、鋭く正確なボールを送ろうとしている。それはチームとしての狙いもあるだろう。6試合勝てていないチームにとって、自陣から落ち着いてゲームを組み立てることは簡単ではない。それこそこの日対戦したフランクフルトはそこを狙って、プレスを仕掛けてきていたわけだ。

 となるとそこをかいくぐり、スペースのあるところで起点を作ることが求められる。届かなったパスも少なくない。でも、伊藤からの展開がチャンスへの可能性を広げていたのも確かなのだ。

 一時は同点となるオーストリア代表FWサシャ・カライジッチのゴールの起点を作ったのは伊藤の縦パスだ。そこからのポストプレーから左サイドを攻略し、左ウイングバックのクロアチア代表DFボルナ・ソサのクロスをカライジッチがヘディングでゴール。後半6分に右サイドから走り出したFWシラス・ワマンギトゥカへ送ったロビングパスは、あと少しでシュートまで持ち込めそうな素晴らしいものだった。相手守備が前を向いて対応できるボールではなく、背走しながら対応しなければならないフィードボールを鋭く送るのだ。相手からしたらこれは守りにくい。

 あるいは後半27分、フランクフルトは伊藤のいるサイドに人を集めてプレスを仕掛けようとしていたが、伊藤は素早く中盤におりてきていたカライジッチへ浮き球のパスで回避。相手がプレスを仕掛けようとしている矢印の逆を取る効果的なパスだった。

 守備でもタイミングよくインターセプトをしたり、ヘディングで競り勝ったりと相手の攻撃を何度も跳ね返していた。「キッカー」誌のデータによると、この日の1対1での勝率は42%。この数字をどう評価すべきだろうか。

 ブンデスリーガトップレベルのCBと比較したら、物足りなさがまだまだあるというのは確か。ただ前々節のRBライプツィヒ戦での勝率17%、前節フライブルク戦での勝率が29%だったことから見たら、この日の伊藤はかなりパフォーマンスを上げていると思うのだ。試合を重ねるごとに成長している。

 マテラッツォ監督は、「4バックは守備では安定していたと思う。セットプレーで失点したが、相手のチャンスは少なかった。ピンチは自分達のボールロストから。ビルドアップではもっと上手くやっていくことが求められるサイドチェンジをしたり、トップに当てて落とす形を入れたりと、バランスよく組み合わせていかないと」と試合後に話をしていたので、今後も4バックが基盤となりそうだ。

 伊藤の安定したハイパフォーマンスでシュツットガルトにまた勝ち星をもたらしたい。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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