京都が12年ぶりのJ1昇格を果たせたワケ プロホペイロが見た曺監督の“熱くて優しい”人柄

ホペイロ松浦氏は「いつもどおり」に2022年もチームを支える【写真:ⒸKYOTO.P.S.】
ホペイロ松浦氏は「いつもどおり」に2022年もチームを支える【写真:ⒸKYOTO.P.S.】

ホペイロ松浦氏が挙げた2021年“唯一の反省点”は?

 松浦氏はシーズン中、11月7日に行われたJ2リーグ第38節ジュビロ磐田戦(0-1)で唯一、「いつもどおり」とは違うことをしていたという。苦笑いを浮かべながら、自らの行動を“反省点”に挙げた。

「ホペイロの自分はピッチに立たずとも、常に選手と同じ気持ちで戦う気持ちで試合に臨んでいます。これはアウェーの磐田戦のエピソードですが、長期離脱は避けられない怪我をしてしまった選手が数名いました。この試合に懸けるんだという想いも込めて、その選手たちのユニフォームをロッカーにかけたら、相手が勝ってしまった。普段はそういったことはしないので、選手が逆に硬くなってしまったら嫌だなと思い、もう余計なことはやめようと(苦笑)。そこは個人的に反省しています」

 2021年シーズンは、京都が12年ぶりのJ1昇格を果たした一方で、日本にホペイロという職業の概念を定着させた第一人者であり、「師匠」と仰いできたブラジル人のルイス・ベゼーハ・ダ・シルバ氏が逝去するつらい出来事もあった。それでも、松浦氏は前を向き、受け継いだホペイロとしてのモットーを貫く覚悟をにじませる。

「2021年を振り返ると、(東京)ヴェルディの時からお世話になったホペイロの師匠が亡くなりました。ヴェルディさんが追悼のセレモニーをホーム(4月21日の第9節)でされて、その相手が運命的にも京都サンガでした。曺さんから『チームとして喪章を着けよう』と提案をしていただきました。『僕の個人的な師匠ですし、両チームで黙とうをしていただけるので大丈夫です。試合に集中してください』と。曺さんの優しさを改めて感じました。師匠から言われた『試合終了のホイッスルは、ホペイロにとって次の試合のスタートのホイッスルだから、その試合の片づけは次への準備だ。試合に臨むモードで仕事をするように』という言葉は、自分のホペイロとしてのモットーとして、今後も守り続けたいと思います」

 2010年以来のJ1を戦う2022年シーズンは、京都にとって重要な1年となるのは間違いない。松浦氏も「J1は甘い舞台ではないのは自分も感じています」と気を引き締める。

「苦労してJ1に上がったので、2021年と同じ、いやそれ以上の気持ちで、いい結果が出せるように一丸となって、『いつもどおり』をキーワードに支えていきたいです。今回昇格できたのは、ファン・サポーターのみなさま、スポンサーのみなさま、京都サンガに関わるすべての方の力です。引き続き来季も、今年以上のサポートをしていただければ幸いです」

 京都は2022年、J1の舞台で新たな船出を迎える。

[プロフィール]
松浦紀典(まつうら・のりよし)/1970年12月26日生まれ、山梨県出身。東京ヴェルディの前身・読売クラブでホペイロとして働いていたルイス・ベゼーハ・ダ・シルバ氏と出会い、Jリーグ元年の1993年に日本人初のプロホペイロとして、サッカー界へ。2003年から14年間、名古屋グランパスのホペイロを務めたのち、17年から京都サンガF.C.のホペイロとして選手を日々サポートしている。モットーは「常に気持ちを切らさず、いつもどおりに磨く!」。

(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)



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