サイドバックのプレー選択、「相手が嫌がる」走りとは? 福西崇史×小池龍太対談【前編】

横浜F・マリノスでプレーするDF小池龍太【写真:Getty Images】
横浜F・マリノスでプレーするDF小池龍太【写真:Getty Images】

【月間表彰】7月の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に横浜FMのDF小池龍太を選出

「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各月ごとに各部門の表彰を実施している。「Football ZONE web」では、現役時代に強靭なフィジカルと戦術眼を武器に日本代表としても活躍した福西崇史氏に、その月に最もアグレッシブなプレーを見せた選手を選出してもらっている。
 
 福西氏が7月度の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に選出したのは、J1リーグで5月下旬から7連勝を飾り、首位の川崎フロンターレを猛追している横浜F・マリノスのDF小池龍太だ。横浜FMの7連勝は、小池が右サイドバックで先発すると同時に始まっている。7月の2試合でも、暑さをものともせずに上下動を繰り返した小池は、その量だけでなく、質の高いフリーランニングでチームの勝利を支えた。
 
 その象徴的なシーンとして、福西氏がピックアップしたのが、第22節アビスパ福岡戦(2-0)で、FWオナイウ阿道(現トゥールーズ)が決めたヘディングシュートにつながったプレーだ。ピッチの中央でボールを受けた小池は、右前方のエウベルにパスを付ける。パスを出してから全力でフリーランニングした小池は、エウベルの外をオーバーラップ。相手の寄せが甘くなったところをエウベルが逃さずに正確なクロスを入れて、オナイウのゴールにつなげている。見逃されても不思議ではないファインプレーを取り上げた福西氏が、Jリーグで好調なサイドバックの思考に迫った。

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福西 今回は7月に最もアグレッシブだった選手として、小池龍太選手を選出させていただきました。その象徴的なプレーとして、第22節のアビスパ福岡戦、2点目のゴールシーンをピックアップしています。

小池 ありがとうございます!

福西 この場面、小池選手は右サイドで前にいるエウベル選手にパスを入れて、オーバーラップをしましたが、どういう判断をされたのですか?

小池 実は外を回った時点で、一度、選択肢を変えています。最初はエウベル選手の内側を走るインナーラップをしようとしていました。相手のボランチよりも、僕のほうが走るのが速いと感じましたし、このプレーの前にも何度かインナーラップで深い位置を取ることができていたからです。そこに走っていくイメージでもあったのですが、それを相手のサイドバックの選手が嫌がって、そのためのスペースを埋めた気がしたんです。

福西 なるほど。

小池 あえて外を回ることで、相手の選手がプレスに行くタイミングを失い、エウベルに時間を与えることができれば、あとはエウベルと中央にいる(オナイウ)阿道の関係性次第かなと思いました。それを上手く自分のなかで見て判断できたかなと思っています。

福西 こうしたランニングをした場合、リターンパスを受けられずにおとりの動きで終わる、いわゆる“無駄走り”になる可能性があったと思いますが、それも理解して何度も走っているんですよね?

小池 “無駄走り”の予定で走っていましたね。エウベルの外を走っている時も「クロス!」と、声をかけていました。彼のキックの精度、中にいる相手選手の枚数を見て、これは勝てるなと思ったので。僕のところにパスを出してもらって、もうワンテンポ使うよりも相手のタイミングをずらして、2人の関係で攻撃を完結させるべきだと思っていました。

福西 それを状況に応じて判断したのですね。

小池 はい。

福西 オナイウ選手がゴール前に走って行って、その背後に天野選手もいます。クロスを上げる直前まで、ゴール前は1対2と数的不利の状況でしたが、それでも得点につながると感じられていましたか?

小池 はい。内側にいるセンターバックは阿道に関与できないところにいたので、阿道が目の前にいる選手の外で叩くか、前で触るかで決まるなと思っていました。あとは、センタリングを上げるエウベルと相手センターバックの駆け引きがあるなかで、エウベルのキックのコースを限定させないために、相手の左サイドバックの選手をエウベルに寄せさせないためにどうすればいいかを考えて、オーバーラップしました。

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