東京五輪行き、“最終オーディション”の行方 OA枠3人が決定、酒井招集に見える狙い

(左から)冨安、久保、堂安、三笘【写真:Getty Images & 浦正弘】
(左から)冨安、久保、堂安、三笘【写真:Getty Images & 浦正弘】

【識者コラム】吉田、酒井、遠藤に決定したオーバーエイジ、人選から見える森保監督の狙いとは?

 事実上の最終オーディションが始まる。

 東京五輪でメダルを狙うU-24日本代表だ。森保一監督はこの6月シリーズでフル代表の柱である吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航を招集。3つのオーバーエイジ(OA)枠をフル活用する意向を鮮明に打ち出した。

 吉田と酒井はバックス、遠藤はボランチだから、後ろのテコ入れを優先した格好だ。そもそもトーナメント以降は守備力がモノを言う。いや、そうしたケースが少なくない。0-0の末にPK勝ち――。これを積み上げれば、無得点でも優勝が成立してしまう。極論だが、そうした仕組みの大会である。

 また、アルゼンチンと戦った3月シリーズを思い起こしても、攻守の両面でチームの出来を左右する「急所」がボランチとセンターバックだった。吉田と遠藤の招集は妥当だろう。

 興味深いのは右のサイドバックを担う酒井の招集か。今回、菅原由勢と橋岡大樹という2人の欧州組がリストに名を連ねるなか、同じポジションの酒井を加えた裏には3バックの選択肢を残しておく狙いがあるのかもしれない。

 3月シリーズの2試合はいずれも4バック。3バックの適否は先送りされたが、いかんせん本番までに時間がない。その点、酒井、吉田、五輪世代の冨安健洋による3バックはフル代表でテスト済み。酒井を3バックの一角に据えれば、菅原や橋岡を右ウイングバックで使う余地がある。

 フル代表では右サイドの2列目に伊東純也を起用すれば、人選を変えずに4-2-3-1から3-4-2-1へシフトできる。だが、U-24代表の場合、右のウイングバックにも難なく対応できる伊東のようなアタッカーが見当たらない。左を主戦場とする相馬勇紀くらいだろうか。

 もとより、右の2列目にはフル代表の常連でもある堂安律や三好康児らがいる。外(ウイング)よりもむしろ、中(シャドー)で持ち味が生きる彼らの特徴を踏まえれば、外回りで機能するウイングバック(兼サイドバック)が欲しいところ。状況次第だが、この最終選考で一度は3バックを試す算段なのではないか。

 人選の絞り込みという意味でのホットゾーンは前線と左サイドだろう。何しろ、現時点では第一選択肢(スタメン候補)も判然としない。4バックの場合、左のサイドバックを誰にするか。3月シリーズで旗手怜央と古賀太陽が試されたものの、評価保留の感があった。ボランチに遠藤を加えたことで、中山雄太を左のサイドバックに回す可能性もある。

 テストが不調に終わった場合、遠藤を最後尾に落とし、冨安を左に回す手もあるが、さすがに緊急時のオプションか。その場合、3バックが意味を持ってくる。このあたりも酒井の招集に踏み切った一因かもしれない。

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北條 聡

1968年生まれ。Jリーグ元年の93年にベースボールマガジン社に入社し『週刊サッカーマガジン』編集部に配属。日本代表担当として2002年日韓W杯などを取材した。04年から『ワールドサッカーマガジン』編集長、09年から『週刊サッカーマガジン』編集長を歴任。13年にフリーランスとなり、現在は様々な媒体で執筆している。

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