元Jリーガー小椋祥平、銀座でサロン経営 コロナ禍の挑戦に“マムシ”の真髄を見た

注目した“パワーナップ”、銀座3丁目にリカバリーに特化したサロンを開店

 リカバリーに特化した施設をオープンするにあたり、まずは酸素カプセルの導入を決めた。2002年の日韓ワールドカップ直前に、骨折したデイビッド・ベッカムが超回復したことで知られる“アレ”だ。酸素を十分に補給し、全身に酸素を行きわたらせることで血行が良くなる。それによって肩こりやだるさが解消され、疲労回復につながる。さらに美容効果や脳の働きの活性化にもポジティブな要素があると言われている。

 酸素カプセル自体は現代社会でさほど珍しいものではなく、一般人でも探せば見つけるのに苦労しない。小椋が注目したのは、脳疲労を回復させるための手段だった。

「脳疲労のリカバリーについて調べていると『パワーナップ』という単語に出会ったんです。これは『パワーアップ』という言葉と、うたた寝という意味の『ナップ』という単語がくっついた造語です。難しく考える必要はなくて、つまり昼寝のようなものです。でもここからが少し専門的で、良い昼寝には5つの条件があります」

 以下の5つが、パワーナップを行う際のポイントだ。

1. フラットな姿勢で眠らない
2. 睡眠時間は20~30分を目安に
3. 視界を真っ暗にする
4. NuCalm(以下、ニューカム)で適度な雑音を
5. 施術前にカフェインを摂取

 それぞれの理由について小椋が熱っぽく話してくれた。

「ベッドや布団で横になってしまうと睡眠が深くなりすぎてしまいます。それで起きた時に体が重くなってしまう経験がみんな一度はあるのではないでしょうか。睡眠時間も同じで、30分以上寝てしまうと体がだるくなりますよね。それからアイマスクを着用してもらいます。人間は視覚から得る情報が多すぎるのでシャットアウトすることで脳が休まります。聴覚効果についてはパワーナップ専用のソフトウェアが開発されていて、それがニューカムです。テニスの全米オープンなどでは大会側がリカバリールームを設置していて、そこでも使用されている音楽ソフトウェアです。最後に、施術前にカフェインを摂取することで30分後の目覚めがより快適になります。コーヒーは好き嫌いがあると思うので緑茶などで代用が可能です」

 聞けば、なるほど。うたた寝侮るなかれ、である。

 物件を探し始めると、銀座3丁目に手頃なテナントが見つかった。酸素カプセルを導入しているサロンの空き店舗で、高性能酸素カプセル3台を安価で買い取れることも好都合だった。ニューカムはアプリをダウンロードするだけだが、使用するための権利を約100万円で購入。さらに独自のアイデアで加圧ブーツや、高濃度酸素水とシリカ水、フィトンチッドの3種類を混ぜたミストも用意した。

藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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