「史上最強」の日本代表が韓国を圧倒 香川、本田らが達成した日韓戦“37年ぶり快挙”

香川真司は切れ味鋭いドリブルで韓国守備陣を翻弄、2ゴールと別格の輝きを放った【写真:Getty Images】
香川真司は切れ味鋭いドリブルで韓国守備陣を翻弄、2ゴールと別格の輝きを放った【写真:Getty Images】

「理想のサッカー」で韓国を終始圧倒、3点差の勝利は1974年以来

 そして後半に入ると、日本の攻撃が加速する。同8分、左サイドで2人を相手に仕掛けていく駒野がボックス内に侵入し、左足で強シュート。これは現在、川崎フロンターレのゴールを守るチョン・ソンリョンが辛うじて弾いたが、フォローした清武弘嗣が本田のシュートを導いて2点目。さらに2分後には、中盤から李→本田→香川と繋がり、李がボールを保持する香川を追い越してファーサイドへとスプリントをかける。そこで香川は、右サイドでフリーの清武へのパスを選択し、李がDFを引っ張ったことで空いたニアポストへとダッシュ。清武の速いグラウンダーのクロスに合わせて3点目が生まれた。

 この後も日本はたたみかけるように、痛快に韓国ゴールへと襲いかかった。

 同13分には内田のクロスを李がフリーでヘッド。同21分には、左サイドのオープンスペースへ駆け上がった槙野智章からのクロスを李が頭で叩く。続いてその4分後にも、カウンターから李のリターンを受けた内田が右サイドから内側へと疾駆。抜け出して完全にGKが届かないコースにシュートしたが、惜しくもポストに跳ね返された。

 終わってみれば3-0のスコア以上の快勝。日本は1974年に国立で行われた日韓定期戦で4-1の勝利を収めたことがあり、37年ぶりの快挙となった。

 韓国のチョ・ガンレ監督は「試合前の様々な心配ごとが現実となった」と俯く。

「センターバックを中心に故障者が多く、編成に悩んだ。さらに試合序盤でキム・ヨングォン(左SB)が負傷退場したために、サイドの不安も加わった。後半に日本のスタミナが落ちたところで速い攻撃を試みようと前線の選手を代えてみたが力不足だった」

 日韓両国ともに、ブラジル・ワールドカップ(W杯)3次予選を控えていた。韓国の指揮官が「これを良い薬に」と話す一方で、日本陣営では本田が「大事なのは、なんとなくではなく、しっかりした内容で勝つこと」と胸を張った。

 また日系4世で、かつて韓国ユース代表合宿に参加した経験を持つ李にとっては、特別な意味を持つ試合だった。韓国側の1トップに抜擢されたパク・チュヨンは、この代表合宿で一緒にプレーをした。「だから彼よりは良いプレーを」とライバル意識を刻み込んで臨み、アグレッシブに攻撃を活性化させた。

「僕の人生にとって大きな1ページ。もちろん点を取りたかったけれど、理想のサッカーができた」

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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