韓国に「一生勝てない」からライバルへ 日本サッカーを変えた歴史的分岐点

ダイナスティカップで得た手応えが翌93年W杯アジア最終予選での韓国戦の勝利につながった【写真:Getty Images】
ダイナスティカップで得た手応えが翌93年W杯アジア最終予選での韓国戦の勝利につながった【写真:Getty Images】

井原も大きな手応え「勝ちに等しい引き分け」

「韓国は正攻法で激しいが、反面ひねりがない。一方日本はオフトが着任して、戦術的な取り決めをしたことで組織的なビルドアップができるようになった。こうして日本がボールを動かせるようになると、韓国の選手たちのほうが先に足がつっていた。嬉しかったですね。韓国にやられる感じは、まったくなかった。日本が急激な成長を示し、これで韓国へのコンプレックスは完全に消えました」(都並)

 井原もまた「勝ちに等しい引き分け」と、大きな手応えを得た一戦だった。

 続く2戦で中国(2-0)、北朝鮮(4-1)を連破した日本は、決勝で韓国と再戦。2-2からPK戦を制して優勝を飾る。さらに翌年、ドーハ(カタール)で行われたアメリカ・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でも、カズの決勝ゴールで韓国を下し崖っぷちに追い込んだ。ホン・ミョンボを初めとする韓国の主力選手たちも、この頃から「日本が本当にライバルとなった」と認識するようになった。

 結局オフト在任中の韓国戦は1勝2分。以後、日韓両国は拮抗した戦績を重ねていくことになった。

[日本代表メンバー]
GK
松永成立
DF
勝矢寿延
堀池 巧
→(HT:福田正博)
井原正巳
都並敏史
MF
柱谷哲二
森保 一
北澤 豪
→(後半31分:ラモス瑠偉)
吉田光範
FW
三浦知良
高木琢也

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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