FC東京が磨き上げる「4-3-3」の機能性 「逆転の発想」と若手登用で過渡期脱出へ

FC東京で好調の要因とされるFWオリヴェイラ【写真:Getty Images】
FC東京で好調の要因とされるFWオリヴェイラ【写真:Getty Images】

【識者コラム】好調を維持するFC東京、オリヴェイラと髙萩が切り拓く新境地

 ベスト4時点で“関東決戦”が確定したルヴァンカップだが、唯一首都圏開催の準々決勝で会心の試合を見せたのがFC東京だった。

 対戦相手の名古屋グランパスは、リーグ戦で川崎の連勝を「10」で止めるなど好調を維持する難敵。明暗を分けたのはサイドの攻防だった。4-3-3のFC東京は、3トップの右にディエゴ・オリヴェイラを起用し、その後方で日本代表の室屋成が抜けたサイドバック(SB)には中村帆高を抜擢。中盤は髙萩洋次郎をアンカーに配し、その前方でプレーするアルトゥール・シルバと安部柊斗が形成するトライアングルの機能性が高まってきた。

 名古屋は「FC東京の真ん中の守備は固いので、サイドから上手く人数をかけて」(稲垣祥)崩すことに狙いを絞っていた。だがFC東京は、オリヴェイラの献身的な動きと中村帆のコンビで自陣右サイドの有効活用を許さなかった。名古屋はスピード豊かな突破に定評のある相馬勇紀をスタメンで送り出したものの、ほぼ消えてしまって前半で交代。後半に入るとトリッキーなドリブルが持ち味のマテウスを左に回してきたが、やはり切り崩すことはできなかった。

 FC東京が好調を維持できている最大の要因は、オリヴェイラが深めの位置で新境地を切り拓いたことだ。元来はストライカーで、久保建英(ビジャレアル/スペイン)の在籍中はパスの受け手として機能してきたが、新しいポジションでは圧倒的なキープ力を活かし、むしろゲームを作る側の役割を見事に演じ切っている。それが最適ポジションかどうかはさておき、中盤の攻防をオリヴェイラが制し、時には落ち着きを与えカウンターを加速することで、攻撃に迫力と安定感をもたらしている。また大卒ルーキーでスプリントの速度、回数ともに圧倒的な数値を誇る中村帆は、明治大学時代からエースキラーとして鳴らした通りに相馬やマテウスを抑え込み、長年チームの活性源だった室屋の抜けた穴を埋めた。

 さらに橋本拳人がロストフ(ロシア)に移籍し、東慶悟が負傷離脱したMFも円滑に動いている。本来は攻撃の構築が得意な髙萩を逆三角形の底に置き、シーズン当初からスタメンでプレーしている安部とシルバが、タイミングを見て攻撃に出たりカバーリングに戻ったりする。敢えて髙萩に前を向いてプレーし易いアンカーを託したのは、オリヴェイラの右起用と同じく長谷川健太監督の逆転の発想による奏功だ。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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