「フリーの概念が違う」 川崎の“パスワーク”に相手脱帽…技術追求の伝統が生み出す差

川崎は三笘(18番)らのゴールで清水に大勝【写真:Getty Images】
川崎は三笘(18番)らのゴールで清水に大勝【写真:Getty Images】

【識者コラム】川崎に5失点大敗…清水DF立田「お手本のようなサッカーをやられた」

 川崎フロンターレに0-5で完敗した清水エスパルスの長身CB立田悠悟は、首位チームとの差を「フリーの概念が違う」と表現した。

「川崎は相手がマークについていてもボールをつける。でもウチはつけられない。出し手がフリーだと思っても、受け手はフリーじゃないから出さないでくれ、という姿勢を見せる。その差は凄く違う。川崎には、お手本のようなサッカーをやられました」

 確かにJ1第13節の川崎は、改めて突出した強さを見せつけた。10連勝の後は2試合の足踏みがあり、清水戦には前戦からスタメンを8人入れ替えて臨んだ。3人のMFも両CBも総入れ替えだから、本来なら多少のノッキングが生じても不思議はない。しかもルーキーの旗手怜央は、初めてウイングではなくインサイドハーフでの起用となった。

 今シーズンは欧州も含めて、ハイプレスと最後尾からのポゼッションが流行した結果、ハイプレスの有効性が際立っている。この試合でも清水のGKからDFへの繋ぎで破綻が生じ、中村憲剛がループで復帰ゴールを決めている。そしてこのトレンドを味方にしているのが、ビルドアップが安定し、相手のミスを決定機に繋げられる川崎だ。

 例えば、清水は今年ピーター・クラモフスキー監督が就任してから本格的にポゼッションに取り組み、大分トリニータは片野坂知宏監督がJ2時代から取り組んできたから浸透度は高く、それで昨年は旋風を巻き起こした。だが、どちらも川崎との対戦では手も足も出ないというのが率直な印象だった。もっとも川崎と対峙してしまうと、現在上位につけるFC東京やセレッソ大阪も似たような展開を強いられている。

 結局8年前に風間八宏氏が監督に就任してから、狭いスペースでプレッシャーを受けながらもブレないテクニックを追求するようになり、体制が変わっても下部組織まで伝統は引き継がれてきた。この年輪こそが圧倒的な層の厚さに繋がっており、他の追随を許さない強さの基盤を成している。

 立田が証言したように、川崎と他のチームでは、まずフリーの概念が異なる。川崎の選手たちは相手に体を寄せられていても、あまり動じることがない。利き足にブレなくパスが来れば、正確に処理して次に繋ぐ技術は十分に磨かれており、当然トレーニングでのプレッシャーは実戦を上回る。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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