私が「朝鮮」と「在日」を背負う理由 在日女子サッカー界のパイオニアが掲げる”使命”

朝鮮民主主義人民共和国U-17女子代表に選出され、チームに貢献【写真:本人提供】
朝鮮民主主義人民共和国U-17女子代表に選出され、チームに貢献【写真:本人提供】

2016年U-17女子W杯で、在日朝鮮人選手として史上初の代表選出

 李誠雅が朝鮮人としての自分を包み隠さず、ありのままで生きたいと思うようになれたのは、祖国の言葉や歴史について、そしてなぜ日本に生まれ育ったかを学び、“確固たる軸”を培えたからだという。

「『李誠雅』という名前や国籍だけ朝鮮人で、何も学ばずにいたら、『なぜ私は朝鮮人に生まれたんだろう』『なぜ私は日本人じゃないんだろう』と思っていたかもしれません。誇りを持てるくらいしっかり知識がないと、何か嫌なことや壁があった時にすぐに負けて潰れてしまいます。でも、私は祖国についてはもちろん、なぜ自分がここに生まれ育って、守ろうとしているものがあるのかについても学びました。その過程で自然と、『自分は朝鮮人だ』『自分は朝鮮代表になるんだ』という気持ちが強くなりました。

 好きで始めたサッカーは、『サッカーを通して何かを伝えたい』『守るべきものを守りたい』という思いになっていきました。『サッカー選手になりたい』が『朝鮮代表になりたい』に変わって、『朝鮮代表になって影響力を持つようになってから、どう発信していくのか』にも変わった。それは12年間、ウリハッキョ(朝鮮学校)に通ったから、そういうメンタリティーに行き着いたと思います」

U-17ワールドカップの決勝戦では日本を破り大会優勝を経験【写真:Getty Images】
U-17ワールドカップの決勝戦では日本を破り大会優勝を経験【写真:Getty Images】

 李誠雅が初めて祖国・朝鮮の国旗を背負って戦ったのは、セレッソ大阪堺ガールズに所属していた2016年にヨルダンで開催されたU-17ワールドカップでのこと。朝鮮民主主義人民共和国U-17女子代表に選出され、在日朝鮮人の中から女子代表選手となる史上初めてのケースとして歴史に名を刻んだ。しかも、決勝で生まれ育った日本を破って大会優勝に貢献したのは特別な経験だった。

「在日の男子選手が切り拓いてくれた道だったので、感謝の気持ちでいっぱいでしたし、『やっと代表に行けるんだ』『早く朝鮮に行きたい』と感じました。自身初めての国際大会で、決勝が日本戦だったのも何かの運命だったのかもしれません。いろいろ込み上げてくるものもあるなかで、日本が相手で良かったと思ったし、何より優勝することができて同胞の皆さんが喜んでくれたのが嬉しかったです」

 実際に朝鮮代表の一員としてプレーしたなかで、基礎技術の高さを実感するとともに、改めて祖国の「考え方」と「メンタリティー」に刺激を受けたという。

「私は日本で育ってきたので、真面目な性質というか、ミスをしないように丁寧に丁寧にやる考え方は、日本の方と似ていると思っています。でも、朝鮮本国の代表選手は苦しい時にしんどい表情をするのではなくて、『今日は今日、明日は明日』と楽観的に物事を捉える。私は練習で上手くいかなかったら、すごく落ち込んで帰っていたけど、今日はもう終わったんだから切り替えないといけないよ、という話をしてくれました。もう一つはメンタリティーで、日本の方以上に国を意識しています。家族の生活のためとか背負うものがあって、ハングリーさやスポーツ選手として勝負に懸ける思いは少し違うと感じました」

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