私が「朝鮮」と「在日」を背負う理由 在日女子サッカー界のパイオニアが掲げる”使命”

幼稚園の頃からボールに触れ、小学生時代に本格的にサッカーを始めた【写真:本人提供】
幼稚園の頃からボールに触れ、小学生時代に本格的にサッカーを始めた【写真:本人提供】

小学生時代には壮絶な差別も経験「ひどい言葉が書かれた紙くずや物を投げられたり…」

 もっとも、在日朝鮮人3世としての宿命に思い悩んだこともあった。中大阪朝鮮初級学校、東大阪朝鮮中級学校、大阪朝鮮高級学校と、朝鮮学校に計12年間通った李誠雅は、朝鮮半島にルーツを持つがゆえに差別にも直面。それは、いじめとは比べものにならないほど過激で、つらい経験だったという。

「日常生活のなかで、見た目で(在日朝鮮人と)判断されることはほぼありません。でも、朝鮮学校の制服を着ていると、通学中、あるいは学校内にいてもひどい言葉が書かれた紙くずや物を投げられたり、通りすがりの見知らぬおじさんに差別的暴言を浴びせられたりもしました。いじめなんかよりも、はるかに上だと思います、小学校低学年の子供相手に大の大人がそんなことをするなんて。今考えると本当に許せないですけど、その当時は何をされているかさえも分かっていませんでした。これは決して私だけではなくて、もっとひどい経験をしている在日の方もたくさんいます」

 朝鮮人である自分を隠したい、知られたくない――。

 自分のアイデンティティーを否定するかのように、心を閉ざしかけた時期があったと李誠雅は明かす。

 noteには彼女の壮絶な体験談が赤裸々に綴られている。ともすれば、かつてのようなつらい思いをまたするかもしれない。そんな不安にも苛まれたというが、新型コロナウイルスによる人種差別や誹謗中傷、自殺のニュースを目にするなかで、「自分と同じような境遇の人に、勇気を持って生きてほしい」との思いが李誠雅を突き動かした。

「最近、世界中で誹謗中傷があって、自殺される方も少なくない。私もそういう経験をして、まだまだ自分自身をさらけ出すには怖い社会なんだと、たくさんの人に知ってもらいたいなと。差別や孤独はやっぱり、自分がその当事者にならないと絶対に分かりません。でも、実際に体験しなくても気持ちを汲んであげることはできると思うし、リアルな体験談を読めば読むほど想像は容易くできるはずです。さすがに恐怖心もありましたけど、今の小学生たちに自分と同じようなつらい思いをしてほしくなくて、朝鮮人に限らず、在日外国人、留学生、世界から差別がなくなるように、と思いを込めて書きました」

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