長野L三谷沙也加が笑顔を忘れないワケ 初ゴールに隠された“両親の涙”で甦った喜び

これまで経験してきた苦労や悔しさをバネに前を向く【写真:©2008 PARCEIRO】
これまで経験してきた苦労や悔しさをバネに前を向く【写真:©2008 PARCEIRO】

作陽高時代の恩師・池田監督もエール「沙也加らしくやり続けてほしい」

 三谷は、サッカー経験者であり、指導者でもあった父親との幼き日の会話の中で芽生えた「両親が笑ってくれたら」「何かやってくれると期待される選手でありたい」という思いを大事にしてきた。辛い時も、そしてピッチでプレーする時も笑顔を忘れないのは、たくさんの人に笑顔になってもらうためだ。敗戦により、心の底から喜べなかった初ゴールの裏では、そういった信念が報われる出来事もあったという。

「昔からずっと、『三谷沙也加あってのチーム』だと言われるような、苦しい状況の時に自分が助けられる選手でいたいと思ってきました。周りのみんながいたから今サッカーができているので、感謝の延長上に、私の笑顔を見てたくさんの人に笑顔になってもらえればという気持ちがあります。ゴールを決めたINAC戦は運良く試合中継があって、たまたま見れた親が涙を流していたらしいんです。見ていて嬉しかったと聞いて、やっぱいいなと思いました。どんな苦しいこともそれ一つでチャラにできて、また頑張れる。『三谷が救ってくれた』『アイツがエースだ』と言ってもらえるように、ゴールとアシストで結果を残していきたいです」

 三谷は7月19日の2部・第1節ちふれASエルフェン埼玉戦(0-1)、自身初となる開幕戦のピッチに立った。今季はチームの2部優勝とともに、背番号と同じ「11ゴール」を目標に掲げる。そんな彼女に、作陽高時代の恩師である池田浩子監督もエールを送る。

「サッカーを楽しむことが一番大切。自分が楽しむためには今まで通り周りの人を大切にすること、そして楽しんでプレーしていればいろんな人が見て幸せになれると思うので、沙也加らしくやり続けてほしいと伝えたいです」

 なでしこリーグに身を投じてからの6年間のプロセスは、もしかしたら回り道だったかもしれない。それでも、三谷は「怪我をしたから今の自分があるので、苦しかった経験もマイナスの記憶ではないです」と前を向く。今までの苦労や悔しさを爆発させたい――。“笑顔のアタッカー”が覚醒を迎える瞬間から目が離せない。

[PROFILE]
三谷沙也加(みたに・さやか)
1995年5月13日生まれ。岡山県出身。162センチ・50キロ。スインキー倉敷―FCエフロンテ(女子)&サウーディ(男子)―作陽高―浦和レッドダイヤモンズレディース―AC長野パルセイロ・レディース。なでしこリーグ1部通算15試合・1得点、なでしこリーグ2部通算2試合・0得点(7月31日時点)。スピードに乗ったドリブルで攻撃に緩急をつけ、2列目からの抜け出しでゴールを狙うサイドアタッカー。ピッチ外では天真爛漫で後輩の面倒見も良く、イジられキャラとしてもチームを盛り上げる。

※取材はビデオ会議アプリ「Zoom」を使用して実施。

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