鎌田大地と“二つの顔” ブンデスで不運続くも…ELで放つ特大の輝き「今は凄くいい」
ヘルタ戦で“幻のゴール”、ブンデス初ゴールはまたもお預け
ヘルタ・ベルリン戦の前半38分、フランクフルトの本拠地コメルツバンク・アレーナが大きな歓声に包まれた。
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左サイドを突破したMFフィリップ・コスティッチがマイナス気味にスピードのあるパスをペナルティーエリアに送ると、走りこんだFWゴンサロ・パシエンシアがこのボールをスルー。詰めてきていた日本代表MF鎌田大地が右足ダイレクトでゴールネットを揺らした。鎌田は笑顔でアシストを送ってくれたコスティッチのもとに駆け寄る。
だがVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定の結果、直前のプレーでコスティッチが相手選手を押し倒していたために、残念ながらノーゴールになってしまう。待望のブンデスリーガ初得点となるはずが“幻”となってしまっただけに、「ブンデスに関しては、まだゴールも生まれてないし。まあ、不運というか……なんだろう、1点が遠いなと思います」と、試合後に残念がるのは無理もない。
だがチームを率いるアディ・ヒュッター監督にとって、このシーンでのオフェンス陣の動きは停滞気味の攻撃に関して非常に満足のいくプレーの一つだった。「あのシーンでゴンコ(パシエンシア)は、最初スペースをあけておいてからそこにダッシュで入り込んだ。相手DFを戸惑わせて、そしてボールをスルーした」と、一連の動きを高く評価した。
FW陣がさぼっているわけではない。だが、得点をなかなか奪えないでいると、とにかく自分がどのようにシュートするかばかりに意識がいきがちになり、スペースを作る動きや味方を生かす動きができなくなってしまうことがある。鎌田も、そんな同僚に理解を示している。
「やっぱり前の選手とかは気持ちの面で、自分で思ってなくても1点取れるだけで楽になったりとか、1点取るだけでいろいろ変わってくると思うので、それをみんな待つしかないと思います。あれだけ点を取れないというのは、自分たちが何か一つ噛み合っていなかったりだとか、あとは少しの運だったり、そういう部分が今は足りていないのかなと思うし。僕自身も(UEFAヨーロッパリーグ/EL)アーセナル戦から、すごくゴール自体には近づけていると思うし。こういうのを続けていくことが大事かなと思います」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。