“Jリーグ選抜”の日本代表は「ちょっと不思議な選考」 指揮官のやり繰りが「興味深い」

日本代表を率いる森保一監督【写真:Yukihito Taguchi】
日本代表を率いる森保一監督【写真:Yukihito Taguchi】

【識者コラム】ポジションごとに異なる人数のバランス、“五輪用”にA代表を使用

 E-1選手権に臨む日本代表が発表された。今回はインターナショナルマッチデーではないので招集に強制力がなく、ヨーロッパでプレーする選手を呼ぶことは難しい。招集に強制力がないのはJリーグクラブに対しても同じなのだが、もうリーグ戦は終了している。天皇杯は残っているが、“Jリーグ選抜”になったのは事前に予想されていたとおりだ。

 五輪世代が多いのは、来年夏に東京五輪が近づいているという事情があるので仕方ないとして、それを別にしてもちょっと不思議な選考になっている。

 まずDFの数が少ない。DF枠で選んでいるのは6人。3バックなら1つのポジションに2人ずつになるが、4バックならバックアップのいないポジションが2つになる。

 逆にMFの10人はいかにも多い。3-4-2-1でも4-2-3-1でもボランチのポジションは2つだが、5人を選んでいる(大島僚太、井手口陽介、橋本拳人、田中碧、田中駿汰)。逆にサイドハーフは仲川輝人、遠藤渓太の横浜F・マリノスの2人しか見当たらない。そして1トップには上田綺世、小川航基、田川亨介の3人を招集した。

 発表されたのは22人なので、あと1人加えるとまたバランスは変わってくるのかもしれないが、現状は3バックでも4バックでもきれいに収まる感じではない。

 ただ、複数のポジションをこなせる選手はいる。古賀太陽はセンターバックの左と左ウイングバックができるし、相馬勇紀はサイドハーフとして左右やれてウイングバックもできるだろう。何人かそういう選手はいるので、これでもバランスは取れるのかもしれない。

 とはいえ、E-1選手権は短期間に3試合を行う(10日・中国戦、14日・香港戦、18日・韓国戦)。同じメンバーでやり続けることは考えられない。どうやり繰りするのかは、興味深い。というより、やり繰りを考えるのはパズルみたいで面倒くさいので、「興味深い」にとどめさせていただく。

 同時にU-22日本代表のジャマイカとの国際親善試合のメンバーも発表された。E-1選手権とジャマイカ戦は、おそらくセットで考えているのだろう。E-1はA代表の試合ではあるが、半分は五輪用に使うわけだ。森保一監督がA代表と五輪代表を兼任している以上、こうなるのは当然かもしれない。ただ、A代表の常連でも五輪世代でもない有力選手たちに、経験を積む場を与えなかったのは少々残念ではある。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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