欧州トップレベルとJリーグの「差」と「違い」 戦術面の“タイムラグ”は小さくなった

欧州トップとJリーグの”タイムラグ”は小さくなりつつある【写真:高橋学】
欧州トップとJリーグの”タイムラグ”は小さくなりつつある【写真:高橋学】

以前は感じた“1年半以上の差” 大分の“疑似カウンター”は決して真似ではない

 ヨーロッパのトップレベルとJリーグでは、戦術的に“1年半以上の差”があった。1年半というのは大雑把な感覚にすぎないのだが、そのぐらい経ってからJリーグに「ようやく来たか」という感じがしたものだった。

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 ヨーロッパと日本は、シーズンがズレている。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)などの試合を見て、「こういうふうになっているのか」と認識した頃に、Jリーグは終盤に近づいている。次のシーズンに向けて採り入れても、その間に向こうも進んでいる。だから、だいたい“1年半”だ。

 戦術の流行というのは、強弱とは直接関係ない。流行をいち早く採り入れたからといって、そのぶん強くなるわけではない。ただ、ヨーロッパと日本のタイムラグはずいぶん小さくなった。

 繰り返すが戦術的な流行に追いついたからといって、Jリーグのチャンピオンがプレミアリーグの王者に勝てるわけではないのだが、タイムラグが少なくなっているのは条件が似てきているからだろうと思う。ヨーロッパの試合を見て真似ていたのでは、タイムラグは埋まらないはずなのだ。それなりの必然性があって、ヨーロッパとはあまり関係なく戦術的な変化が生まれていると考えられる。

 例えば、GKのロングフィードからカウンターを仕掛ける攻撃。大分トリニータの「擬似カウンター」が注目されたが、あれはマンチェスター・シティのGKエデルソンのプレーを見て真似たわけではないだろう。

 ビルドアップに対して相手がハイプレスを仕掛けてきたら、ロングパスでひっくり返すのは以前からあるセオリーだ。だが、そのセオリーを実現するには高木駿のようなGKがいなければならない。高木のキック力があるからこそ、大分は自陣のパスワークで相手を釣り出す戦法をとれた。キック力のあるGKという条件がなければ、セオリーといっても効果を発揮できない。その戦術を機能させる条件、背景が似てきたので成立した。

 Jリーグの後方でのビルドアップは、およそ3人で行われている。3バックでも4バックでも、ビルドアップでは3枚回しが多い。数的優位を作り、後方のハーフスペース(ピッチを縦に5等分し両端と中央の間にあるエリア)をボールの「出口」にするために都合がいいからだ。必然的にサイドバックは高い位置をとり、そこにボールが集まるケースが多くなっている。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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