東欧の名将がJ1札幌を躍進させる理由 選手を驚かせた「超攻撃的」の裏にある本質

ミシャが重視する「ツヴァイカンプ」での強さ

「攻撃的ではない。『超』攻撃的なサッカーを目指す」

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 ミシャは札幌でチーム作りを開始するにあたり、このような所信表明をしていた。そして、次のような言葉も発している。

「世界中を見渡すと、就任時に『攻撃的で魅力的なサッカーを目指す』と口にする監督は多いが、開幕から数試合経ってみると自陣ゴール前に大型バスを並べて失点を避けるようなサッカーになっている監督も多い。だが、私はそうした類の指導者ではない」

 そうして始まったミシャと札幌との日々だが、1年目の昨季にいきなりクラブ史上最高となる4位でフィニッシュし、上位に食い込んだ。ドラスティックな戦術変更を敢行するとあって、なかなか結果が出ないと予想する向きもあっただろう。そうした不安を、結果という部分で見事に一蹴したことになる。

 ただし、その戦いぶりが実際に「超攻撃的」だったかというと、もちろん判断基準は人それぞれではあるのだが、「私のチーム作りはまだプロセスだ」とミシャ自身が今年の夏にも発していたように、まずは土台作りに時間を割いていたように思う。

 就任からここまで、外部から見ている立場として感じるのは、カギとなっているのは「運動量を多く保つこと」と「ツヴァイカンプ」。後者はドイツ語で「1対1の戦闘」を指し、近年の日本サッカー界でいえば「デュエル」に相当する。メンバー選考のところでも、この「ツヴァイカンプ」での強さを見せられる選手が優先されてきた印象があり、ここを強調することで強者から自由を奪い、戦力差をグッと縮めていたように思う。

 ミシャサッカーの象徴とも言える“ボール保持”のところでも、「『危ないと思ったら簡単に蹴ってもいい』と言われている」と、韓国代表GKク・ソンユンは語る。試合前やハーフタイム時のミーティングでも、「前線にジェイや鈴木(武蔵)といった高さのある選手がいるのだから、長いボールも有効に使おう」という言葉も、ミシャの口から発せられることがあるという。広島や浦和では相手を嘲笑うかのような巧みなパスサッカーを演じてきたとあって、指揮官は札幌でもショートパスを徹底して求めているのかと思ってしまいそうになるが、実際には現実的なプレーもしっかりと織り交ぜられている。

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