「若手の登竜門」になれないJ2リーグ 昇格争いを彩る外国籍選手の力と経験値

(左から)京都DF闘莉王、柏FWクリスティアーノ、横浜MF松井大輔【写真:Getty Images&高橋学】
(左から)京都DF闘莉王、柏FWクリスティアーノ、横浜MF松井大輔【写真:Getty Images&高橋学】

首位の柏は助っ人の力をフル活用、横浜FCはスタメン平均年齢30歳超え

 J2リーグも全42試合中35試合が消化され、いよいよ最後の直線という趣だが、昇格へ向けた上位陣のアプローチは両極に分かれている。

 例えば、首位を走る柏は4人の外国籍選手枠をフル活用し、一昨年J1で旋風を巻き起こした頃の育成を軸にしたスタンスからは一変している。同じくJ1への復帰を目指すアルビレックス新潟との試合(第30節/1-1)では、両チーム合わせて8人の外国籍選手がピッチに立った。

 また3位につける横浜FCも、依然としてJ2では別格の質を誇るレアンドロ・ドミンゲスをトップ下に配し、最前線にイバ、最終ラインにはカルフィン・ヨン・ア・ピンが不可欠。やはりJ1在籍経験を持つヴァンフォーレ甲府戦(第31節/3-2)では、合わせて7人の外国籍選手がプレーをした。

 今季途中から横浜FCを指揮する下平隆宏監督は、「あくまでJ1昇格後も見据えて、ビルドアップから自分たちの攻撃する時間を長くする」サッカーを追求していると話すが、逆にチーム構想を担うフロント側の狙いを推測すれば、一刻も早く脱却したいとの想いが透けて見える。

 第32節のスタメンで平均年齢が30歳を超えていたのは、横浜FC、甲府、ジェフユナイテッド千葉の3チーム。ベンチ入り平均も30歳を超えたのは横浜FCのみで、これはJ1を合わせても最高齢になる。

 逆に第35節終了時点で4位モンテディオ山形、5位京都サンガF.C.、7位水戸ホーリーホックなどは、多くの試合でスタメン全員が国産選手で占められている。もちろん予算の関係もあるが、コンセプトを共有し土台から固めていこうという意識が窺える。

 2部リーグという観点で先進国との違いを探れば、若手の登竜門となっている欧州や南米などに対し、日本ではなかなか若い選手を確保できないという点がある。すでに同じような傾向はJ1でも表れており、例えば川崎フロンターレは海外志向の強い三好康児(アントワープ)や板倉滉(フローニンゲン)などは早くから他のチームに貸し出し、一方で大卒の有力選手を補強している。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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