もっと強く、もっと賢く… 南野と伊東、4年半の時を経て交差した「欧州最高峰の洗礼」

南野は4年前に苦い経験をしていた【写真:Getty Images】
南野は4年前に苦い経験をしていた【写真:Getty Images】

4年半前に南野が味わった屈辱 「技術のレベルはめっちゃ高い」

 そういえば、初めての欧州カップ戦にスタメン出場したものの、前半だけで交代した1人の日本人選手がいた。2015年2月、その同じような経験をしたのが、この日対戦相手として躍動していたザルツブルクの日本代表MF南野拓実だった。

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 UEFAヨーロッパリーグのラウンド32、ホームでスペインのビジャレアルと対戦したゲームだった。スタメン出場した南野は、積極的に攻守に動き回っていたが、プレスはかわされ、攻撃でもボールを失い続けていた。そして前半だけで交代。試合後、「(相手の)技術のレベルはめっちゃ高い。守備は普通に激しいですし。そんななかでもしっかりボールをつないで前に運べる、シュートに持ち込めるぐらいになれないとやっていけない」と反省の弁を口にしていた。

 そして「国際大会の高いレベルで試合をするために欧州へ移籍したと思うが、実際にやってみて意識が変わったり、何か見つけたことは?」という記者の質問に対し、「やっぱり今言ったことがすべてですし、そういうのを意識して今後も、こういう高いレベルのなかでやっていけるようにしていければいいかなと思います」と、今後に向けた思いを明かしてくれた。そして南野は常に上を目指し、幾度の厳しい試合を経験した。あの時から、4年半もの時間が経っている。ヘンク戦での南野は、あの日、相手にやられていたプレーを見事に自分のものとして、ピッチ上で体現していた。

 伊東はこの日、その南野がいたザルツブルクを相手に、思い描いたプレーはできなかったかもしれない。

「今日は戦略的に、中にずっといろと言われていたので、難しかったなというのはあります。ウチのサイドバックが上がるスペースを空けたかったんだと思いますけど」

 そう振り返っていた。チームとして求められている役割がある。それをこなしながらも、自分のプレーを出していくことが求められる。今後どうなるかは、これからの取り組み次第だろう。

 伊東も、まだまだここからなのだ。

「次、また頑張ります」

 最後にそう短く言葉を残して、ミックスゾーンを去っていく。そこには、CLという最高峰の舞台で戦い続けるための決意が込められていたはずだ。もっと強くなって、もっと怖くなって、もっと賢くなる。相手を飲み込むだけの力を身につけてみせるために――。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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