「久保の才能を潰せないと悟った」 チリ主力との互角の“やり合い”に英記者も驚き

「彼のクオリティーが頭角を現わすのはこれから」

 日本にはポゼッションを高める能力がなく、あまりに多発したパスミスは、頻繁に時機を逸する犠牲を払っていた。それは森保監督にもダメージを与え、チリを後方に追いやるチャンスを久保や中島に与えることもほとんどできなかった。しかし、励みとなるのは、久保にそのようなチャンスが与えられた際は、王者に対して攻撃を仕掛ける期待感を持つことができたということだ。ターンし前を向く動きや、ボールを運ぶドリブル、攻撃陣に向けた狭いスペースへのパスなど、彼の存在感はチリの守備陣に気を張らせ続けた。

 相手に立て続けにゴールを奪われてもなお、このヤングスターはチームメートが気力を取り戻すべく、刺激を呼び起こそうと試みていた。彼が試合で見せた最高の瞬間は、中山からパスを受けた際、ペナルティーエリア付近で3人のチリの防波堤をかいくぐり、サイドネットを叩くシュートを打ち込んだ場面だ。フィニッシュには落胆することになったが、彼の存在感は自信とクオリティーを際立たせる強烈な破裂音を鳴らしていた。

 久保が完成された作品であるとは誰も考えていないし、FC東京を旅立った男はA代表で習得すべき優先事項がたくさんあることに疑いの余地はない。しかし、輝かしい未来を提示するショータイムを披露しており、サムライブルーの先発レギュラーとして、トップ下のMF南野拓実(ザルツブルク)からポジションを奪い得る存在だ。久保は優秀な選手に囲まれる環境に身を置いているが、コパ・アメリカのスカッドが日本の素晴らしい才能のすべてを揃えていると鼻を高くするのはやめよう。彼のクオリティーが頭角を現わすのはこれからだ。その日はまもなくやってくるだろうが、火曜日は日本サッカー界の新時代の到来を垣間見ることができた。

マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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