“エディージャパン”が遺した日本サッカーへのヒント 世界的監督と保った絶妙な距離感

マンチェスター・シティのグアルディオラ監督【写真:Getty Images】
マンチェスター・シティのグアルディオラ監督【写真:Getty Images】

名将グアルディオラらも実践、他競技の優れた点から得るヒント

 欧州では特に、他競技の発展からヒントを得ることが多い。それは彼らの「知」の在り方の意識が大きく影響している。

 フットボールにおける前線からのプレスがアイスホッケーのフォアチェックに起因する話は有名だし、2018年のロシア・ワールドカップ(W杯)で躍進したイングランド代表のセットプレーは、指揮官のギャレス・サウスゲイトがバスケットボールのNBAをヒントに生み出したもの。ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)は元水球のレジェンドをスタッフに加えているし、ユルゲン・クリンスマン(元アメリカ代表監督)もアメリカスポーツの優れた点を吸収していた。

 これらは日常的なトップレベル同士の、競技を越えた交流から生まれる。

 また、それぞれの競技の特殊性に拘泥するのではなく、他競技の優れた点や進んでいる点を抽象化し、フットボールに転用する「知」の在り方にも注目すべきだろう。

 これらのことは、世界のサッカーをベンチマークしコピーするだけでは、決して彼らには追いつけないことを物語っている。「総合アート」であるフットボールの発展は、人間の「知」の発展の反映であるといっても大袈裟ではない。

 日本のスポーツ界でこの姿勢を最も持っていたのは、2015年のラグビーW杯で「スポーツ史上最大の番狂わせ」を演じた指揮官エディー・ジョーンズ氏だろう。

 彼は日本代表ヘッドコーチ在任中、多くの日本や世界の指導者と交流し、日本人を指導するにあたって常にヒントを得ようとしていた。サッカーでは元日本代表監督の岡田武史氏、野球では読売ジャイアンツの原辰徳監督、その他にもバレーボール前日本女子代表監督の眞鍋政義氏、競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチといった人物たちだ。

 また彼は読書家でもあって、ビジネスの世界への関心も強い。そして、他の世界の具体的な事象の本質を抽象化して取り出し、ラグビーの世界に活用していく名人でもある。

 2015年の世紀の番狂わせから4年が経過した今、サッカー界がエディー氏から学べることはなんだろか。エディー氏が日本で指揮を執るきっかけを作り、サントリーラグビー部時代、そして日本代表チームのディレクターとして最も近くで彼を支え、日本代表の成功の一翼を担った稲垣純一氏から話を聞くことができた。そこで得られた日本サッカーへのヒントとして、次の3項目を取りあげてみたい。

[1]世界と日本を知る指導者と長い関係をキープする
[2]監督を越えていく選手とスタッフを育てる
[3]「ジャパンウェイ」の具体性

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