“アンフェア”だった日本サッカー協会の解任手順 ハリル元監督の更迭理由を再説明すべき

ハリル氏が訴訟を取り下げたことで、田嶋会長は解任理由について再び説明しなければならない状況になったと言えるだろう【写真:Getty Images】
ハリル氏が訴訟を取り下げたことで、田嶋会長は解任理由について再び説明しなければならない状況になったと言えるだろう【写真:Getty Images】

ハリルホジッチ氏が日本協会に対する訴訟を取り下げ 解任理由はいまだ不透明

 バヒド・ハリルホジッチ元日本代表監督が先日、訴訟を取り下げた。自らの解任を巡って日本サッカー協会と田嶋幸三会長に対して、慰謝料1円と謝罪広告を求めていた。ハリルホジッチ氏が訴訟を取り下げたことで、田嶋会長は解任理由について再び説明しなければならない状況になったと言える。

 慰謝料1円というのは、金銭目的ではないが、それでは民事訴訟にならないということだろう。ハリルホジッチ氏が求めていたのは謝罪である。しかし、何に対する謝罪なのかよく分からない。監督を解任するたびに謝罪広告を新聞に出す義理は協会にはない。契約上の違反がなければ、いちいち謝罪の必要などないはずなのだ。

 解任の理由は不透明だった。田嶋会長は「信頼感の薄れ」など、いちおう解任理由を説明はしたが、あれで納得した人はいないと思う。むしろ「公に言えない何かがあるのではないか」という疑念が膨らんだだけだった。ハリルホジッチ氏も、解任理由が到底納得できなかったから訴訟という手段に出たに違いない。

 ところが、法廷闘争になったがために協会側に説明を回避する大義名分を与えてしまった。「係争中なので不利になる恐れがあるから説明しない」は、政治の世界でよく聞くセリフである。和解案も拒否していたから、裁判が長期化する可能性もあった。真実を明らかにしたいのが訴訟の目的なら、訴訟を取り下げたほうが賢明と言える。

 協会は代表監督を解任できるし、いちいち謝罪する必要もない。ただし、不透明だった解任理由はきちんと説明すべきだ。ハリルホジッチ氏に対してではなく、この件で納得がいかないサッカーファンに対してである。

 裁判がなくなったことで、隠す必要もなくなった。どんな理由で解任してもいいが、その理由は明らかにしないといけない。そうしないと、協会に対するファンの信頼は得られないからだ。せっかく訴訟を取り下げてくれたので、ここでハリルホジッチ氏を刺激するような発言は避けたいだろうが、競技面での理由ならば大した問題にはならない。意見は違っても見解の相違にすぎない。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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