リバプールの舵を握った名将クロップ 新天地で待ち受ける最大の障壁とは?

クロップに託されたミッション

 リバプールは当初、3トップシステムを採用してセンターにベンテケを置いていたが、センターフォワードを務めるベンテケに流動性が不足していたことから、前線で孤立する場面が目立ち、思うような攻撃を展開できていなかった。

 前任のブレンダン・ロジャース前監督は解決策として、同時期に新加入したFWダニー・イングスを起用。2トップのような配置に変更し、運動量の多いイングスをベンテケと近い距離でプレーさせることで、前線を活性化させた。

 だが、それにより、中盤への負荷が増幅。チームの主軸であるMFフェリペ・コウチーニョの、攻撃面におけるパフォーマンスの最大値を引き出すことが難しくなった。結果的にチームから創造性が失われ、歯車は噛み合わず。8試合を消化した時点で、3勝3分2敗の10位に低迷していた。

 ベンテケは第6節ノリッジ・シティ戦での負傷により、2週間の戦線離脱を余儀なくされている。その期間中に、ベンテケの獲得をクラブ側にオーダーしたロジャース監督が解雇されることとなった。

 後任のクロップ監督にとって、63億円を費やした身長190cmの重戦車FWを使いこなせるか否かが、失墜した名門に再び栄光をもたらす上での避けては通れないテーマとなる。

「勝利が何よりも重要だ。しかし、どのように勝ち、どのようにプレーするのかも大事だ。私には哲学がある。とても感情的に、とても速く、とても強くプレーすることだ。私のチームはフルスロットルで、全ての試合で限界を求める」

 クラブ公式サイトを通じて残したコメントには、「ゲーゲンプレス」をチーム戦術として導入するとの宣言が明確に示されていた。長きにわたってリーグタイトルから見放されている、名門リバプールの復活。決してハードルの低くないこのミッションを成功させるには、クロップ監督の代名詞とも言える「ゲーゲンプレス」の浸透と、クラブが巨額投資に踏み切ったベンテケをフィットさせる起用法を見出すことが不可欠になる。

【了】

城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

 

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