終わらないサクセスストーリー 代表初選出の武藤雄樹を支える言葉

恩師の一言

 武藤の得点パターンは、優れたオフ・ザ・ボールの動きでマークをかいくぐり、ワンタッチで決めることだ。9ゴール中、実に8ゴールがトラップを挟まずに決めたもの。残りの1ゴールも、味方のシュートが相手DFに当たってコースが変わって武 藤に“ぶつかって”こぼれたところをそのまま蹴りこんだものだ。
 むしろ武藤の長所は、労を惜しまずに1試合を通じて走り続けられるところにある。浦和のシャドーは、攻撃時に後方からのボールをつなぐリンクマンになることに加え、ストライカーであることを同時に求められる。さらに、守備時にはサイドハーフとしての役割もある。それらを高いレベルでこなすからこそ、ペトロヴィッチ監督からもチームメートからも信頼を勝ち取ることができた。
 無尽蔵のスタミナのルーツは、流経大時代にある。入学時に中野雄二監督から投げかけられた「高校からプロにいけなかった時点で、技術では負けている。だったらどうする?走って戦うしかないんじゃないか」という言葉だ。厳しい走り込み で知られる流経大ならではの練習に、200段ほどの階段を往復するメニューがある。今でも「めちゃくちゃ辛かった」と鮮明な記憶が残るほどだが、そうやって鍛え抜いてきたからこそ今がある。
「走ってなんぼという指導を受けてきた。それがあるから、今も試合に使ってもらえていると思う。僕よりうまい選手はたくさんいる。僕が走れなくなったら、おしまいかなと思っている」
 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督は「今のところ中盤に入っているが、FWでも使える」と評し、その幅が広いプレースタイルを評価している。しかし、それ以上に、ハリル監督が懸念する中国の悪いピッチ状態や、8日間で3試合を消化する厳しい日程であることを考えれば、武藤の走力が大きな武器になる可能性が 高い。
 まさに、一気に階段を駆け上がるような勢いで日本代表まで上り詰めてきた。しかし、その頂上は、いまだに見えていない。武藤のサクセスストーリーは、まだまだ続いていくはずだ。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング