「普通の監督ならやらない」 “教え子”城彰二も西野采配に感服、16強ベルギー戦の勝算は?
【98年W杯日本代表・城彰二の視点】「先発6人変更」は機能せずも、「0-1で終わらせる」賭けに勝つ
普通の監督ならやらないような決断を下し、ロシア・ワールドカップ(W杯)という舞台で見事“賭け”に勝った――西野朗監督の下で戦った1996年アトランタ五輪を含め、勝負師としての一面を知るだけに、ポーランド戦での采配には驚きとともに、決断力に納得させられる部分があった。
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西野監督は全体的なマネジメントを考え、それを選手に伝えていくのが上手い人。例えば、ポーランド戦前日の記者会見にGK川島永嗣を出席させ、試合でキャプテンマークを巻かせて出場させたのもその一つ。第1戦のコロンビア戦では壁下を通した相手のFKに反応が遅れて失点、第2戦でもパンチングミスから失点とミスが続いていたが、川島自身の意識を高めさせたことがポーランド戦での好プレーにつながったと思う。
チームとして戦い、好成績をつかむために、ピッチ内外の様々な部分に気を配る西野監督だからこそ、決勝トーナメント以降の戦いを見据えて「スタメン6人変更」という大胆な策に打って出たのだろう。通常「勝っているチームのスタメンはいじらない」がセオリーであり、しかもポーランドに負ければグループリーグ敗退の危険性もあったなかで大きな勝負に出た。
その狙いは二つで、一つは先月の代表招集から1カ月以上を戦ってきて、主力選手に疲労が溜まっていたこと。そしてもう一つは、サブ組のモチベーション維持。こうした長い期間に及ぶ代表活動だと、練習を繰り返すばかりになるサブ組の選手には相当なストレスが溜まるもの。選手はやはり試合でプレーしたい。チーム全体の心身両面でのマネジメントを踏まえたうえで、彼らの「勝利に貢献したい」という思いを試合にぶつけさせたのだろう。
だが結果論として、6人を入れ替えたチームはポーランド相手に思うように機能しなかった。やはり普段の練習で主力組と分かれてプレーする機会が多くなっており、選手間の連携やリズム、ポジショニングといった部分で難しさがあった。1戦目と2戦目のメンバーとは明確な差が出てしまい、それが苦戦を招いた要因であることは間違いない。
そうしたなか後半14分に先制点を許し、0-1の状況で迎えた終盤に、西野監督は他会場の途中経過を見ながらリスクを負わない戦い方を選択した。この消極的に映る采配は、世界各国で大きな批判を浴びているが、勝負の世界では当たり前のこと。特に後半、ポーランドを相手に攻め手がなくなっていた状況を考えれば、西野監督でなくても他会場の情報が耳に入れば同じ決断を下したかもしれない。
もちろん、セネガルが1点を奪った時点で日本の敗退が決定するというリスクが存在していた。西野監督もかなり迷ったと思うが、最後は腹を括ってFW武藤嘉紀に代えてMF長谷部誠を投入し、「試合を0-1で終わらせる」というメッセージを明確なものにした。この決断が日本に2大会ぶりの決勝トーナメント進出という結果をもたらした以上、称えられるべき采配だと思う。