W杯王者ドイツの崩壊を招いた「3つの敗因」 名手リトバルスキーが見た母国の問題点とは?

1990年W杯の西ドイツ優勝時のリトバルスキー(左)と主将マテウス。マテウスのような真のリーダーがいなかった【写真:Getty Images】
1990年W杯の西ドイツ優勝時のリトバルスキー(左)と主将マテウス。マテウスのような真のリーダーがいなかった【写真:Getty Images】

リーダー不在を嘆く「タフな男がいないんだ」

 そして最後に挙げたのが、ベテランの相次ぐ代表引退により「リーダー不在」という見えない痛手を被っていたことだという。

「前回大会後に3、4人の選手が代表を引退してしまった。そのギャップを埋めることができなかった。クローゼ、メルテザッカー、ポドルスキ……。彼らのスタイルはリーダーだった。そしてたとえ控えの立場であったとしても、出番を与えられれば確実にチームに貢献してくれる存在だった。

 一方、今回の代表でのリーダーは誰なのか? ボアテングは怪我で苦しみ、いつもの彼ではなかった。フンメルスは試合後に毎回しっかりとコメントを残す。チームの調和を高める行動に出ているが、仲間の奮起を促すような攻撃的な言動はない。彼には成長が必要だ。

 タフな男がいないんだ。ドイツでは常に、リーダーの資質を持つ選手には高いパフォーマンスも求められた。活躍できない選手は、リーダーとしての条件を満たしていないということになる。その場合は、監督が指名しなければいけない。この選手がリーダーなのだ、と。我々の時代にはアウゲンターラー、コーラー、ブッフバルトとリーダー役がいた。なぜ、マテウスが5大会連続でW杯に出場したのか。リーダーとして卓越していたからだ。彼は味方にも容赦なかった。勝利のためには、他の選手にも面と向かって厳しい言葉を投げつけた。そして、奮起を促したのだ」

 リトバルスキー氏が名前を挙げた以外にも、2014年当時の代表キャプテンだったDFフィリップ・ラームやMFバスティアン・シュバインシュタイガーも、ブラジルW杯後に代表を去っていった。

 現在のチームで、最終ラインの要であるDFマッツ・フンメルスはリーダーとしての資質を備えながらも、同僚に対する厳しさが足りなかったという。相棒のDFジェローム・ボアテングもパフォーマンスの低下から求心力を発揮できなかったという。

 技術、身体能力、戦術と近年質の高いサッカーを演じてきたドイツだが、本来最大の武器である精神的な逞しさ、それを体現する真のリーダーが現れないまま、グループリーグ最下位という憂き目を見てしまった。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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