西野J快進撃の根底に息づく“ハリルの遺産” プロ集団に変えた「戦う意識」と「経験則」

ハリルホジッチ前監督は日本に「デュエル」の意識を植えつけた【写真:Getty Images】
ハリルホジッチ前監督は日本に「デュエル」の意識を植えつけた【写真:Getty Images】

ハリルホジッチ前監督が求めてきた「デュエル」の意識が結実

 今大会の日本の健闘に、まずは前任者の“遺産”を指摘したい。それが顕著に表れたのがセネガル戦だった。過去の日本は、欧州や南米はもちろん、アフリカ勢や中東勢と比べてもフィジカルの脆弱性は明らかだった。これは日本人の宿命とも言える。このためフィジカルで勝負するのではなく、日本人の特性――アジリティーとクイックネス、テクニックなど小回りのきく素早い動き出しとパスサッカーに活路を見出そうとした。

 裏返せば、「最初からフィジカル勝負は逃げてきた」ということになる。その弱点を指摘したのがハリルホジッチ元監督だった。「デュエル」をキーワードに、選手に逃げることなく「決闘」を挑むことを求めた。

 そこで4年前との比較だ。西野ジャパンとザックジャパンの攻撃スタイルは基本的に変わらない。素早くパスをつなぎ、ピッチの横幅をワイドに使いつつ、縦パスを出し入れしてギャップを作って相手の陣形を崩しにかかる。むしろ4年前の方が選手は自信を持っていた。

 しかし4年前のコートジボワール戦後、DF長友佑都は接触プレーで「当たったら体が痛かった」と体幹の違いを痛感。コロンビア戦でハメス・ロドリゲスとマッチアップしたMF青山敏弘は「ボールを取れる気がしなかった」と完敗を認めた。大会後、ブラジルW杯でサプライズ選出されたFW大久保嘉人は、日本のプレーがクリーン過ぎると指摘した。サイドの選手が相手のドリブル突破に抜かれそうになる。すると日本選手は両手を上げて「自分はファウルしていません」とアピールしたプレーを批判した。

六川 亨

1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。

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