東欧セルビアでEL出場権を狙う日本人DF J未経験の24歳「最初は本当に苦しかった」

「満員のスタジアムでサッカーをやりたい」

 欧州での旅の幕開けは、手探りの状態で始まった。「初めはモンテネグロってどこ? サッカーリーグあるの? というレベルだった」が、そこからステップアアップを果たし、今ではEL争いを繰り広げるチームの主軸となった。

「最初は本当に苦しかったですけど、2年半のモンテネグロ生活は絶対に必要だったと思えています」

 ボール際での強さと運動量を持ち味とするプレーは、監督やチーム関係者からも高い評価を受ける。自信は確信へと変わった。

 海外組の一人として研鑽を積む彼に、次なる目標を聞いてみた。一つ呼吸を置き、「一番はこの半年で目に見える結果を残せるか」と前置きした上で、次なるステージに進みたいと語気を強めた。

「もちろんELやチャンピオンズリーグというところは目標です。それから将来的には(ドイツ1部リーグ)ブンデスリーガでプレーしたいです。(今年の)夏の移籍も視野に入れています。この半年の結果次第では、自分の目標に近づくための移籍ができるんじゃないかなと思っています」

 ブンデスリーガを目指す理由についても聞くと、「あまり人が入らないところでやっているので、満員のスタジアムでサッカーをやりたいっていう思いですね」と少し照れくさそうに笑った。モンテネグロもセルビアもスタジアムを埋め尽くすほどの観客が集まることはほとんどない。志村は1試合あたりの平均観客動員数が4万人を超える、欧州でも最も熱狂的なリーグに思いを馳せている。

 日本でプロになれなかった男は今、多くのサッカー選手が憧れる欧州カップ戦出場を目指して戦っている。今はまだその名を知る者は少ない。スポットライトが当たるその日まで、直向きに走り続ける。

<Profile>
志村謄(しむら・のぼる)/1993年3月11日生まれ。24歳。JAPANサッカーカレッジを卒業後の2015年3月に、モンテネグロ1部のFKベラネへ加入してプロデビューを果たした。その後3クラブを渡り歩き、17年7月にセルビア1部FKスパルタク・スボティツァへ移籍。リーグ戦22節消化時点で20試合に先発出場し、1得点を記録している。

【了】

石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa

SCEP●写真 photo by SCEP

 

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