J1初Gの27歳苦労人「苦しい時期を」 2度の大怪我、J3で苦戦…殻を破った「守備を頑張る選手」の評価

プロ初ゴールを決めた京都FW加藤拓己の存在感が試合ごとに増している
京都サンガF.Cは10月24日、J1リーグ第12節でガンバ大阪と対戦し、2-2のドローに終わった。敗戦濃厚のなか、チームを救ったのが京都FW加藤拓己だった。度重なる負傷、J3への移籍、J1に舞い戻ってからも苦境の日々を過ごした27歳FW。ついに訪れたJ1初ゴールをいう待望の瞬間も、試合後に語ったのは”チームファースト”の精神だった。
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待望の初ゴールは泥臭くも、チームにとって価値のありすぎる一撃となった。3試合連続で出場となった加藤。後半頭から投入されると、同8分には裏への抜け出しでエリア内で倒され、決定機阻止としてGK一森純の退場を誘発した。
しかしチームは勝ち越しを許し、攻めあぐねる展開。それでもアディショナルタイム2分、G大阪DF福岡将太がクロスの処理を誤ったのを見逃さず、いち早くこぼれ球に反応した加藤が冷静に左足で流し込み、相手GK東口順昭に触られながらもネットを揺らした。
「(新井)晴樹が持った時に、クロスは来るなって分かって。ガンバさんのDF陣も90分やって疲れているのが見えていたので、処理がなかなか上手くいかないシーンもありましたし、何か起きるんじゃないかなって思っていたんで、それが本当に運よく転がってきた」
加藤のキャリアは、決して平坦なものではなかった。早稲田大学3年生時の2020年11月に2022年からの清水エスパルスが内定。同年代では最速で内定が発表され、期待のなか加入したが、2022年に左膝前十字靭帯損傷で長期離脱を余儀なくされると、2023年に再び左膝前十字靭帯断裂と不運に見舞われる。そして、J3のSC相模原への期限付き移籍を経て、2026年にJ3松本山雅FCへ加入。百年構想リーグでは16試合4ゴールと結果を残すと、京都に引き抜かれる形でJ1の舞台へと戻って来た。
土壇場で追い付いた一撃は、27歳ながら嬉しいJ1初ゴール。だが、試合後のミックスゾーンに加藤の口から真っ先に出たのは、チームへの思いだった。
「僕自身の結果ももちろんとても嬉しい。怪我でなかなか清水で出れなくて、今こうしてJ1で出れている中で、やっぱり結果を出せるのはすごく嬉しい」と率直な思いを明かしつつも、「ですけど、やっぱりどうしても僕の結果よりもチームの勝利が最優先だと思うので。今日の僕のゴールを勝ち点3に変えられるのであれば、僕は変えてほしいなと思う」と独特の言い回しに、勝利への飢餓感が滲む。
「それぐらいやっぱりチームが勝つことはすごく重要だと思うので、もっとそこに対して貪欲になっていかなきゃいけないなって思いますね。本当にJ2とかJ3に比べて、日本の最高峰のリーグなので、そんな簡単に綺麗にゴールが決まるとは思ってないので。最後足で触るとか、最後1個詰めれるかとか、多分そういうところが勝負の分かれ目になるってずっと思っていたので、そういうのを準備していきながら、やるのが大事だなと思いますね」
順風満帆に見える今季も序盤は苦しんだ。カテゴリーの壁は高く、開幕戦で途中出場を果たして以降は約1か月間出場はなし。9月6日のFC東京戦で途中出場するも、再びその後はベンチを温める日々。それでも腐ることはなかった。慣れないポジションでの起用が続いた際も、不満を外に向けるのではなく、己に矢印を向けた。そして自ら、ランコ・ポポヴィッチ監督の部屋のドアを叩いた。
「なかなか試合出れない中で、実際に自分からポポさんにもね、何が足りないかっていうのも聞きに行ったし。それと向き合う期間っていうのはだいぶ長かった。その期間があったからこそ、ポポさんもはっきり言ってくれるんで。そこに向き合ってきたからこそ、今の結果があると思う」
指揮官との膝を突き合わせた対話が、加藤のプレースタイルを進化させた。
「やっぱりまだ現状、『守備を頑張る選手』っていう評価で止まりだったので。本職じゃないところで出て、もちろん言い訳はたくさんできる状況でしたけど、その中でもチームを活性化させることができなかったのは、自分自身も感じていた。そこに対してすごい向き合う時間が長かった。それこそ、この前の鹿島戦のアシストした(永田)倖大が持った時にポケットに走るプレーは今まで無かったですけど、その期間に十分取り組んできたし、今日のところでも今までだったら諦めて終わってしまっていたのが、またボールが戻ってくると信じて振り向いて準備ができるようになったし、ポポさんが求めた部分は徐々にできてきてるのではないかなと思います」と自分自身でも日々の取り組みから変化が如実に表れ、結果につながっていると手応えを明かした。
今月17日のサンフレッチェ広島戦では初のスタメンを飾ると、立ち上がりには日本代表DF荒木隼人を吹き飛ばすフィジカルを見せ、決定機を演出するなど存在感を発揮。続く鹿島戦では敗色濃厚のチームを救う値千金のアシストを記録した。
「あとはこれを継続していく意識でやってしまうと、どうしても人間は衰退していくものなので。もっともっと貪欲に、次2点取るとか、次はスタメンで出るとか、もっともっと高みを目指してやっていかなきゃいけないなって思いますし、それは僕に限った話じゃなくて、チームとしてやっていかなきゃいけない」
ミックスゾーンを去る直前、加藤は京都、そして苦しいリハビリ生活を支えてくれた古巣・清水への思いも口にした。
「大学3年生でね、自分の年代の中では最速でプロが内定した中で、清水のサポーターも期待してくれていて。それでも怪我でなかなか上手くいかなくて、J3に行ったりして、苦しい時期を過ごしてきました。けどこうやって僕を見つけて、僕を迎え入れてくれたこの京都で、もう一回J1でチャレンジができるっていう思いで今年スタートしたので。クラブの発展に貢献していきたいなっていう思いがある。やっぱり楽しいですよね、J1で結果出せるのは。歓声の量も違うし、見られている数も違うし、もっともっと頑張っていきたいなと改めて思います」
エリート街道からの転落、2度の大怪我、J3への移籍、そして居場所を掴むための指揮官との対話。幾重もの挫折を泥臭く乗り越えてきた27歳のストライカーが、ついに掴んだ記念すべきJ1初ゴール。それでもなお個人の喜びよりチームの勝利を渇望する加藤拓己の貪欲な姿勢こそが、これからの京都を力強く牽引していくはずだ。





















