日本代表DFが魅せた“10番”の輝き 右SB→トップ下→3バックへ…欧州で広がる幅「持ち味出せる」

ブラガ戦の勝利に貢献した鈴木淳之介
DFとして相手の攻撃を食い止めるだけではない。攻撃では中央まで入り、ゴール前で決定機を生み出す働きも見せた。
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日本代表DF鈴木淳之介が所属するコペンハーゲンは、UEFAカンファレンスリーグのブラガ戦で3-0の快勝を飾ったなか、この90分間には鈴木がデンマークで広げているプレーの幅が凝縮されていた。
0-0の膠着状態を崩したのは鈴木のプレーだ。50分、ペナルティーエリアのすぐ近くでパスを受けると、ダイレクトで味方へつなぐ。一度は相手にクリアされたものの、すぐにボールを奪い返し、今度は自らエリア内へ進入していく。そこから味方からのパスを引き出すと、右足に上手く持ち直して右足シュート。これはGKの好セーブに阻まれたが、混戦から味方が押し込み、待望の先制点が生まれた。
右SBとして出場していた鈴木がなぜあそこにいたのか。
試合後のミックスゾーンでこのシーンについて尋ねると、次のように答えてくれた。
「後半から攻撃時に10番的な位置に入って、相手がなかなか対応できていないなかで、いい形で先制点を取れました。そこからも、みんなでしっかり耐えながら、カウンターだったりで2点目、3点目を取れたので、すごく助かりました。チームとして、誰が出てもこういう試合ができるというのは、すごく大きいかなと思います」
コペンハーゲンは前半からハイプレスとテンポのいい展開で悪くない形を作れていた。ただ、決定機を作り出すまでにはいかない。その状況を変えるため、後半はボール保持時の配置を修正し、その1つが鈴木のポジショニングだった。相手の対応が定まらない場所で攻撃に関わることが、まさに突破口になった。
ボー・スヴェンソン監督も、その変更がもたらした効果を振り返っている。
「攻撃により勢いを生み出すために、ボール保持時の戦い方を少し変えました。全体としては、試合が進むにつれてどんどん良くなっていったと思います。ハーフタイムの時点では3-0で勝つような展開には見えませんでしたが、後半早い時間帯に先制できたことで、当然ながら試合の流れは変わりました」
鈴木にとって、中央でゴールに絡む役割は、この試合だけの特別なものではないという。チームの戦い方に応じて取り組んできたことであり、もともと持っていた攻撃の感覚を発揮できる仕事でもある。
「チームのやり方によっては、ああいう場所に入って、どんどん関わるということは、これまでの試合でもやっています。元々あのポジションをやっていましたし、ああいうゴール前で関わるのはすごく好きなことなのです。これからもああいう場所だったり、仕事が来ると思うので、得点だったりアシストだったり、試合に関わるプレーができればいいなと思います」
育成時代にはトップ下やボランチでプレーしていた鈴木。サイドバックとしての守備を担いながら、攻撃ではかつて経験したポジションの感覚を生かす。新しい役割を任されるたびに、自分の持ち味をどこで、どう出すかが問われるが、ブラガ戦ではその答えを一連のプレーで示したと言える。
もっとも、トップ下の位置まで入り込むからといって、守備の仕事が軽減されるわけではない。むしろそこから戻る距離が長くなるので、負荷は高くなる。それでも自身のサイドからの突破をほぼ許さず、終盤の3バックへの移行にも応えた。そんな複数の役割をこなす本人の受け止め方は、いたって自然だ。
「なかなか前半はうまくいかなかったので、後半は自分の立ち位置を変えて、柔軟に対応できています。攻撃の立ち位置はああいうふうに中に入りますけど、守備の時は普通にうしろに下がってやっています。監督から信用されて、あのポジションもできると思われて使われているわけなので、持ち味を出せるようにとにかくやるだけですね」
コペンハーゲンはデンマークリーグでも首位を走っている。ポジション争いは激しい。そんなチーム事情について、スヴェンソン監督は次のように話している。
「今は非常に多くの試合をこなしているので、プレー強度を維持するためにも、選手を入れ替えながら変化をつけていくことが重要です。多くの選手がチームに貢献できる状態にあることが大切です」
鈴木もリーグ戦では直近3試合続けてベンチスタートとなり、直前のミッティラン戦では出場機会がなかった。このブラガ戦は、9月15日の国内カップ戦以来となる先発のチャンス。その一戦で攻守に存在感を示し、3-0の勝利に貢献したのは大きい。
「こういう連戦の中でメンバーが入れ替わっても同じようなサッカーができているのは、すごい強みだと思います。自分も今、なかなかスタートから出ていないなかで、今日の試合は気合が入っていましたし、その中でしっかりと結果を出せたというのは、自分としてもチームとしてもすごく大きいかなと思います」
そしてコペンハーゲンにはチームを後押しする熱狂的なファンの存在がある。この日も2万4636人が詰めかけ、ゴール裏には巨大なコレオと花火が登場した。こうした雰囲気でプレーする喜びを鈴木も全身で感じながらプレーしていると、心境を明かしてくれた。
「ああいう素晴らしいサポーターがいるからこそ、このチームを選んだというのもあります。こういうビッグクラブでやれるというのは、自分としても大きな経験になっています。本当にかみしめながらやっているという感じです」
1試合の好プレーで満足するわけにはいかない。それでも、この日攻守に見せた優れたパフォーマンスは確かなアピールになったはずだ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。























