21歳日本代表が「魔法をもたらした」 赤髪イメチェンで劇的初ゴール…指揮官絶賛「彼に感謝を」

フライブルクの後藤啓介が初ゴール【写真:picture alliance/アフロ】
フライブルクの後藤啓介が初ゴール【写真:picture alliance/アフロ】

シャルケ戦で決勝ゴールを決めた後藤啓介

 日本代表からドイツへ戻った後藤啓介がフライブルクの公開練習で突然、赤髪にイメチェンして登場し、ファンや地元メディアに新鮮な話題を提供していた。自身の決勝ゴールで2-1の勝利を飾ったシャルケとのホームゲーム後に、髪色を変えた背景にあった思いを尋ねてみたところ、はにかみながら明かしてくれた。

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「前は赤のメッシュにしたんですけど、それでは足りないかなと思ったので、全体を赤にしました。赤い髪のキャラクターって、面白いキャラクターが多いというか、自分の中では『ONE PIECE』のシャンクスだったり、『スラムダンク』の桜木花道だったり、『黒子のバスケ』の火神大我だったり(笑)。そういうキャラクターが本気になったときに、とてつもないプレーを発揮するっていうイメージです。自分の中ではそういうのを意識しています」

「はたから見たら意味分かんない話かもしれないですけど」と笑ったが、この試合でまさに苦境にいたチームを助けるヒーローの活躍を見せたのだから、むしろぴったりなイメージだ。

 試合後のミックスゾーンでも、クロアチア代表FWイゴール・マタノビッチは地元記者から後藤の活躍ぶりを聞かれると、「赤髪のケイスケは素晴らしいプレーをしたよね。赤い魔法を僕らにもたらしてくれたのかな。チームに本当に良く溶け込んでいる。話し合いにオープンだし、熱心に貪欲に取り組んでいる」と冗談交じりに後藤を称賛していた。

 この試合では鈴木唯人が64分に2枚目のイエローカードで退場処分に。数的不利となれば、交代選手の起用法は難しくなる。65分にマタノビッチに代えてCFルーカス・ヘーラーというカードが切られていたため、そのまま終盤まで我慢するという選択も十分考えられた。

 それでもジュリアン・シュースター監督は69分、後藤をピッチへ送りだした。それも普段とは異なる戦術的な役割を託しての起用だった。これまでの後藤の取り組みが、監督から確かな信頼を得るだけのものだったことの表れだろう。

「どのポジションでも自信はあります。ただ、自信があっても使ってもらえなければ意味がないので、監督が自分を信頼して使ってくれたことはすごく大きいです。やっぱり代表ウィークで360分あって45分しか出てないという悔しさを、監督もその気持ちを分かってくれていて、帰ってきたときに話をしてくれました。そういう監督のためにも、という思いはあったかなと思います」

 そして迎えた85分、同じく途中出場のビンツェンツォ・グリフォが左サイドから送り込んだクロスに、見事なタイミングで捉えたヘディングシュートを叩き込んだ。ゴール右に吸い込まれたボールを見届けると、満員のスタジアムに詰めかけていたファンは、何度も何度も後藤の名前を叫んだ。

 待望のブンデスリーガ初ゴールが、チームを首位に引き上げる貴重な決勝点。だが、後藤がまず口にしたのは、仲間への感謝だった。

「一緒に出たルーカス(・へーラー)のおかげで。彼が相手を引っ張ってくれて、自分のスペースができたと思います。彼には感謝していますし、あと本当にビンツェ(・グリフォ)のボールが、素晴らしかったです。僕は当てるだけだったという感じです。ルーカスとはファーサイドのセンターバックと2対1を常に作ろうという話をいつもしていたので、それが今日やっと生きたかなという感じです」

 話を聞いていると、それぞれが持つ特徴を生かした見事な采配でもあったのだったのだなと思わされる。

 1人少ない状況で、高さがあり、互いにサポートし合える関係性ができつつあるヘーラーと後藤を同時起用。さらに精度の高いクロスボールを供給できるグリフォを投入することで、空中戦の怖さを倍増させる。そんな明確な狙いがあったことで生まれたゴールとも表現できる。

 もちろん、攻撃的な選手を増やしたことで守備が手薄になってしまっては本末転倒だ。その点について、後藤は自分に求められた役割を明確に理解していた。

「まずはしっかり守備をすること。自分たちが下がりすぎてしまうと、相手のやりたいサッカーになってしまうので、しっかりプレッシャーをかけていくように言われました。それをやれば必ずチャンスは来ると思っていましたし、実際、直近の代表戦でも同じような展開がありました。そういうのもあったおかげで、ポジティブにプレーできたかなと思います」

 終盤の選手起用でさらに興味深かったのは、シャルケがビルドアップに固執せず、前線に蹴り込む傾向を見抜いていたシュースター監督が、数的不利のなかであえてダブルボランチの一枚を下げたことだ。守備時は両サイドが中に絞りつつ、FW2人の1枚が、ダブルボランチの位置まで戻るというやり方を決断したのだ。

 その辺りの采配についても、後藤の説明はとても論理的なものがあった。

「プレッシャーをかけに行ったら蹴ってくれるし、逆サイドで味方がプレスに行ったときに、僕がいるサイドにボールが来ることはなかったし、ないことも分かっていました。だから自分がボランチのエッゲ(エッゲシュタイン)のカバーには入れる位置まで戻りつつ、相手CBにボールが渡ったときは牽制をしながら、常に相手のセンターバックやボランチ、サイドバックに行ける距離を意識していました。キーパーがボールを持ったときにも牽制しつつ、セカンドボールやこぼれ球を意識してプレーしていました」

 シャルケはフライブルクの守備をかいくぐれなくなり、逆にボールを失う場面が増えてきた。ゴールの可能性を確かに生み出せるほど采配がハマったのは、起用した選手の理解と力量とかみ合わせを明確に把握していたからだ。

 後藤は、この3か月で守備でのポジショニングやインテンシティ、それぞれのプレーの意味とつながり、ポストワークのタイミングなどを着実に向上させてきた。だからシュースター監督は自信をもって、後藤もピッチに送ったのだ。

 試合後の記者会見で後藤について尋ねられると、シュースターは次のように称賛していた。

「今日、みなさんも見たと思うけど、ピッチに入ってからどんなプレーを見せてくれていたか。本当に素晴らしいものがあったと思う。彼の後ろでプレーする味方選手は、みんな彼に感謝をしていることだろう。貪欲で、どんどん吸収するし、正しい取り組みをしているし、どうすればもっと良くなるかを何度も聞いてくるからね」

 取材を終えてスタジアムを後にしようとした僕に、あるフライブルクファンが声をかけてきた。

「ゴトウはグレイトだったよ! 最高だ」

 赤髪のヒーローはこれから何度もフライブルクのファンを魅了してくれるはずだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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