元Jリーガー父から叱咤「ガツガツ行け」 重責で失った”らしさ”…旧友が伝えた「選手権で会おう」

桐生第一の本間響【写真:安藤隆人】
桐生第一の本間響【写真:安藤隆人】

桐生第一3年MF本間響「恩返しをしたいと思っています」

 やはり、この男が中盤にいると違う。そう感じさせるには十分な時間だった。

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 10月12日に行われたプリンスリーグ関東1部第15節、桐生第一vs帝京の一戦。1点を追いかける桐生第一のピッチに、怪我から3か月ぶりに帰ってきた男がいた。

 3年生のボランチ・本間響。かつてアルビレックス新潟の象徴として「ミスターアルビレックス」と呼ばれ、現在は同クラブのスカウトを務める本間勲氏を父に持つ、桐生第一のキャプテンだ。

 途中出場で中盤の底に入ると、明らかにボールの流れが変わった。セカンドボールを回収したり、中央でボールを巧みに引き出したりしては、的確なパスで左右、縦に散らす。周囲の状況を把握する視野の広さと、正確なキックを生かした展開力。本間を経由して攻撃が加速し、鋭いカウンターからチャンスが生まれていった。

 これこそが本間響の持ち味だ。もちろん、3か月のブランクは簡単に埋まるものではない。結果的にチームは0-2で敗れ、2失点目には本間自身の守備対応も絡んでしまった。

「2失点目は僕が上手く身体を運んで、相手の攻撃を遅らせる守備をしていれば、ああなってはいなかったと思う。勝ちが絶対に欲しかった試合で、失点に絡むのは本当に足りないことが多かったなと思います」

 復帰できた喜びよりも、勝てなかった悔しさが先に口をついた。キャプテンにとって、高校最後の夏は思いもよらない形で過ぎていった。

 7月下旬、夏休みに入ってすぐの浜松遠征。その初日に左足第5中足骨を骨折した。プリンス関東1部前期で思うように勝ち点を積めず、インターハイ予選では準々決勝で共愛学園高に敗退するなど、苦しんできたチームのリーグ後期、選手権に向けての土台をもう一度作るための重要な夏。

 本間にとっても、仲間と切磋琢磨をして団結力を高める時間だったが、中村裕幸監督らと話し合った結果、一度チームを離れて故郷の新潟で手術とリハビリをすることが決まった。

「ここでチームを離れるのは本当に申し訳なかった」とリーダーとしての責任を感じながらも、「しっかり治してこい」というスタッフやチームメイトの後押しを受け、キャプテンマークをFW高裕徳に託して約1か月間、実家で過ごしながらリハビリ生活を送った。

 当初は松葉杖をつき、座った状態での体幹トレーニングが中心。新潟にいる間は一度もボールを蹴ることができなかった。

 しかし、サッカーから少し離れたこの時間が、本間にとって大きな意味を持つことになった。

「高校に入ってから、ここまで長期で地元に帰ったことがなかったので、凄く気持ちも満たされました」

 アルビレックス新潟U-15時代の仲間たちとも久しぶりに再会した。新潟明訓高やアルビレックス新潟U-18に進んだ旧友たちと語り合い、U-18の試合にも足を運んだ。中でも心に残ったのが、新潟明訓に進んだMF上田陸や本間光琉らからの言葉だった。

「選手権で会おう」

 その一言が、再び本間の心に火をつけた。そして、故郷での時間には、もう1つ大きな意味があった。父・勲さんとの対話だ。新潟のレジェンドであり、同じボランチとして長く第一線で戦ってきた父は、キャプテンとなった息子のプレーをこう見ていた。

「思い切りプレーができていない。もっと初心に戻ってやった方がいい。お前の特徴は守備だからもっとガツガツ行け。お前のところで緩さが出て失点をしてしまうシーンがあるから」

 厳しい言葉だった。だが、そこには息子の本来の姿を知る父だからこその思いがあったのだろう。昨年から出場機会を掴み、最終学年ではキャプテンという重責を背負った。チームをまとめ、勝利に導こうとするなかで、いつしか自分らしい思い切りの良さが薄れていたのかもしれない。父の言葉は、愛息にもう一度原点を見つめ直すきっかけを与えた。

 9月上旬、プリンス関東1部後期開幕を前に群馬へ戻った。しかし、すぐに試合に出られる状態ではなかった。その間に1年生の橋本奏人らが出場機会を掴んだ。本間はチームメイトが自信を持ってプレーできるよう、ピッチの外から支えることに徹した。

 後期開幕の桐蔭学園戦で0-4と敗れた際には、中村監督から「お前にももっとできることがある」と言われた。

「もっとピッチ外でできることを徹底しようと思ってやってきました」

 キャプテンマークを巻けなくても、できることはある。そのことを考え続けた日々だった。そして迎えた帝京戦。選手権予選を前にした最後のリーグ戦で、ようやくピッチに戻ってきた。

 復帰戦で見せた確かな存在感にも満足はしていない。父から指摘された守備の甘さとも、改めて向き合っているとともに、ここからの巻き返しに闘志を燃やしている。

「インターハイ予選、プリンス関東1部と、思い通り勝てない試合が続いて、まだ先生方や後輩たちに何も感謝という形を伝えられていないんです。だからこそ、選手権予選はきちんと勝ち抜いて、恩返しをしたいと思っています」

 選手権予選では引き続きFW高がキャプテンマークを巻く見込みだという。本間はそれを支えながら、チームのために声を出し、ボランチとしてゲームをコントロールする役割に徹するつもりだ。

「今は(群馬県最大のライバル)前橋育英がとかではなく、上を見過ぎずに目の前の相手に集中して戦うことを大事にしたいです。1つずつ勝ち上がっていきたいです」

 故郷で旧友から受け取った「選手権で会おう」という言葉。父から託された「初心に戻れ」という言葉。そして、「もっとできることがある」という恩師からの期待。

 このすべてを胸に刻んで、本間響は支えてくれた人たちの恩返しを誓って、13年ぶり3回目の選手権出場を果たすべく再び群馬のピッチに立つ。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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