追い続ける日本代表DFの背中「僕の理想形」 高校生CBの覚悟…未完の大器が目指す高み「超えられる選手に」

桐生第一高3年・ゼイダム小田孟武「最後の最後にいい結果を出したい」
サンフレッチェ広島で活躍し、今秋には日本代表デビューも飾ったDF中野就斗。その背中を誰よりも熱い視線で見つめ、追いかけている後輩がいる。桐生第一高3年のCBゼイダム小田孟武(ハリム)だ。同じ中学・高校のルーツを持ち、守備の要である「背番号5」を受け継いだ未完の大器が、大学経由でのプロ入りと高校最後の選手権に向けた覚悟を語った。
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「就斗さんは僕の理想形ですね。真似したいし、より憧れています」
中野と同じAZ’86東京青梅から桐生第一高へと進み、同校の伝統である背番号5を受け継いできたゼイダムにとって、先輩は特別な存在だ。
その中野が9月、ついに日本代表に初招集された。海外組が大半を占めるチームにおいて、数少ない国内組として選出され、キリンチャレンジカップとキリンカップの4試合で2試合に先発。ニュージーランド戦では右サイドバックとして先制点につながるクロスを供給するなど、存在感を示した。
「今の日本代表でJリーグの選手が入ることは相当難しい。でも、就斗さんはJリーグで活躍して、海外組だらけの代表に入っても堂々と試合に出て、安定したプレーをしている。本当にコツコツとやってきたからこそ、あの場に立てたと思うんです」
ゼイダムにとって、中野は単なる憧れの先輩ではない。自分がこれから歩もうとする道を、ひと足先に切り拓いてくれた存在でもある。
182センチのサイズを持ち、空中戦の強さ、スピードを生かしたカバーリング、正確なフィードが武器。中学時代は主に守備的ボランチとしてプレーし、高校進学後にCBへ転向した。まだ経験は浅いが、その潜在能力を評価され、今年はU-17日本高校選抜にも選出された。
だが、その成長曲線は決して順調なものではなかった。昨年夏、流通経済大柏との練習試合で1-8の大敗を喫した際には、試合後に大粒の涙を流した。2年生ながら背番号5を託されていたが、中村裕幸監督から言われた「最後はお前が全部守るつもりでやれ」という言葉の重みを痛感した。
そして今年も苦悩の連続だった。インターハイ予選では準々決勝で共愛学園高に0-2の敗退。プリンスリーグ関東1部でも思うように勝ち点を積み上げられず、最下位に苦しんでいる。10月12日のプリンス関東1部第15節の9位・帝京戦、この『裏天王山』でも桐生第一は0-2で敗れた。
「2失点とも僕の守備が軽かった。もっとやらないといけないと思っています。高3になって結果が全然出ていなくて、自分のミスで負ける試合も多い。でも、前を向いてやり続けるしかない」
昨年から何度も悔しさを味わい、そのたびに自分の未熟さと向き合ってきた。その中で進路は関東の強豪大学の進学を決めた。
「大学サッカーでは強豪でやりたいと思いましたし、プロになるために入りました。関東はどこに行っても強いFWしかいないので、そこで鍛えていきたいです。何より、就斗さんも大学経由でプロになって日本代表にまで登って行った。それはどの時期も努力をずっとし続けているからこそだと思っています。それを真似して、超えられるような選手になりたいです」
しかも、ゼイダムが見習おうとしているのは、そのキャリアだけではない。CBを本職としながら、プロではウイングバックやサイドバックという新境地を切り拓いたプレースタイルにも強く惹かれている。
「僕自身、CBをやりながらもサイドバックやウイングバックをやってみたいと思っているんです。オーバーラップからの攻撃参加や、カットインからのシュートをしてみたいし、僕に前への推進力が身につけばもっとプレーの幅が広がると思うので。もちろんそのためにはもっとスピードを磨かないといけないし、技術もまだまだです。でも、就斗さんはCBをやっていたからこそ対人で負けないし、運動量も凄くて、攻撃のクオリティーも高い。そこも見習いたいです」
しっかりと自分の将来像を描きながら、必死で今の苦難を乗り越えようとしている。ゼイダムにはブラジル人の父と日本人の母から常に伝えられている大事な言葉がある。
「サッカーを楽しんで、自分を信じてやってほしい」
この言葉を胸に、未完の大器は自分の可能性を信じている。ただ、その前にやるべきことがある。高校最後の選手権に13年ぶりの出場を果たすことだ。
「インターハイ予選では僕のミスで負けているので、絶対に集中して戦わないといけない。最後の最後にいい結果を出したいです」
昨年のインターハイ予選決勝では、中野が応援に駆けつけてくれた。憧れの先輩の前で敗れた悔しさを今も忘れてはいない。中野が歩んだ道を追いかけ、いつかは超えていく。そのためにも、まずは桐生第一の5番として、最後の戦いをやり切る。
まだ完成されていないからこそ、未来には無限の可能性が広がっている――
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。
























