海外挑戦の声も→異例のJ2“長期契約” 逸材高校生DFの覚悟…欧州で直面した現実「全然勝てない」

神村学園高3年DF竹野楓太「最初はJリーグで基盤を作った方がいい」
10月8日、J2のいわきFCは神村学園高3年のDF竹野楓太の加入が決まったことを発表した。2027年1月から加入予定で、契約期間は2031年6月30日まで。約4年半の長期契約も大きな話題となった。
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竹野は182センチ・70キロのサイズを誇り、スピードとフィジカルの強さ、足もとの技術を兼ね備えた大型DFだ。CBだけでなく、サイドバックやウイングバックも高いレベルでこなし、特にダイナミックな攻撃参加と精度の高いクロスは大きな武器となっている。
昨年はU-17日本代表としてU-17ワールドカップに出場し、ベスト8進出に貢献。神村学園でもインターハイと全国高校サッカー選手権の夏冬2冠を達成するも、個人としては国立競技場のピッチを踏むことができず、悔しい結果に終わった。
それでもプロ注目のタレントであることは間違いなく、スケールの大きな守備のユーティリティとして将来を嘱望される逸材には、J1の複数のクラブなどが強い関心を寄せ、ベルギー1部のシャルルロワでも練習参加を経験していた。
J1、海外という選択肢もあるなかで、なぜ彼はいわきを選んだのか。この決断はしっかりと地に足をつけて、自分の現状やサッカー人生を見据えたうえでのものだった。
「僕は身体がまだまだ細いし、フィジカル的にまだプロのレベルに達していない部分がある。いわきに練習参加をした時に、自分のスピードを『もっと鍛えたら、もっと出せるようになる』と言われたんです。いろいろ考えて悩みましたが、海外に行く前にJリーグで自分のフィジカルベースをきちんとプロ仕様にしてからでも遅くはないと思いました」
実際にベルギーのシャルルロワの練習に参加した時には、フィジカル面で大きな差を痛感したという。
「全然フィジカルで勝てないし、そこで勝てない時点で自分の武器を思うように出せない現実を突きつけられました。そこからより考えるようになりました」
もちろん、海外への思いがなくなったわけではない。むしろ逆だ。将来的に海外で勝負するために、今の自分に何が必要なのか。その答えを突き詰めた先に、いわきという選択肢があった。
最大の決め手となったのは、練習参加で目の当たりにした具体的な数値の変化だった。神村学園の先輩で、いわきに加入したDF中野陽斗とMF荒木仁翔の身体の変化を目にした竹野は、その成長ぶりに大きな衝撃を受けたという。
「2人とも体脂肪は減ったのに体重が増えていて、かつ最大速度も増していたんです。特に陽斗くんは体重が4キロも増して、かつ最大速度が1km以上も増していて、数値にリアルに出ていたので、僕もそこを上げたいと思いました」
単に身体を大きくするのではない。筋肉量を増やしながらスピードも高める。いわきが取り組むフィジカル強化の成果を、身近な先輩が数字で証明していたことが、彼の心を動かした。
「僕はプロではCBだけではなく、右サイドバックや右ウイングバックでも勝負したいと思っているので、よりフィジカルを強くして、かつ最大速度を上げていきたいんです」
182センチのサイズを持つ右サイドバック、右ウイングバック。対人守備や空中戦で強さを発揮しながら、スピードを生かした上下動で攻撃にも絡める。そんな希少価値の高い選手になるために、今の自分にはさらなる肉体的な進化が必要だと考えた。ただ、見つめ直したのはフィジカルだけではなかった。
「個人的にいきなり高卒で海外よりも、自分のメンタル的にもしっかりと最初はJリーグで基盤を作った方がいいと思っています。これも僕の中で覚悟だし、チャレンジです」
昨年度の選手権では、前述した通りU-17W杯から帰国後にチームで定位置を失い、夢舞台のピッチを踏むことができず、自信をなくした時期もあった。気持ちが一度落ちると、どんどん悪い方向へ向かってしまう。そんな自分の弱さを認めることから、今年のキャプテンとしての挑戦は始まった。
「今年に入ってメンタルが強くなったというよりは、自分の弱さを受け入れることができるようになってきたと思っています」
強がるのではなく、弱さを受け入れる。それは今回の進路選択にも通じているように感じた。
周囲からは海外挑戦を勧める声もあったという。しかし、彼は目先のカテゴリーや華やかさにとらわれず、今の自分に必要な環境を選んだ。
いわきとの長期契約は、その決断の大きさを物語っている。クラブが彼に大きな期待を寄せ、彼の持つビジョンを実現させようとする意志を感じるし、何より彼自身がいわきでの成長を望んでいる。
「正直、この1年は自分のことばかりにフォーカスせずに、チームのことを第一優先にして行動したい。そうすることで自ずと自分も成長できて、自分の評価にもなると思っています」
そう語る竹野には、まだ選手権2連覇という神村学園のキャプテンとして果たすべき仕事が残っている。高校サッカーを最後まで毅然とやり切った先に、また新たな未来が待っている。人生を左右する決断を下した先に、見える光に向かって。彼は自分が下した選択の正しさを証明するために、着実に一歩ずつ前に進んでいく。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。





















