日本代表FWに「ビビらず行こうと」 J名門相手に急遽出番も…逸材大学生CB「負けてはいけない」

京都産業大1年生DF浮邉泰士「どこのレベルに行っても負けてはいけない」
「消極的になって、このチャンスを無駄にしたくなかったんです」
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この言葉を聞いて、改めてこの男の持つポテンシャルの高さを感じた。
10月7日、日産スタジアムで行われた天皇杯3回戦、横浜F・マリノスvs京都産業大の一戦。1-0とリードしていた京産大だったが、後半14分にキャプテンで清水エスパルス内定の4年生CB小野成夢が一発退場となり、数的不利に陥った。
その2分後、10番のMF皿良立輝に代わってピッチに送り込まれたのが、鹿児島城西高出身の1年生CB浮邉泰士だった。
突然訪れた出番。しかも相手はJ1の名門で、マッチアップするのは先のキリンチャレンジカップとキリンカップサッカーで日本代表に初選出されたFW谷村海那。さらにFWジョルディ・クルークスやMF天野純ら実力者が揃う攻撃陣を、1人少ない状況で食い止めなければならない。
大学1年生にとって、これ以上ないほど過酷なシチュエーションだった。だが、浮邉は臆するどころか、堂々と日本代表経験者に真っ向勝負を挑んだ。
「谷村選手はストライカータイプで、身体がどっしりとしているタイプのFWには自信があります。そういうタイプには、どこのレベルに行っても負けてはいけないと思っています」
183センチのサイズを生かした力強い対人守備と空中戦。相手に簡単に前を向かせず、身体をぶつけ、クロスに対しても粘り強く対応する。何より印象的だったのは、相手の出方を待つのではなく、自ら積極的に駆け引きを仕掛けていたことだ。
「谷村選手は駆け引きを仕掛けてきたのですが、僕はそれに受け身になるのではなく、自分から仕掛けることを意識しました。谷村選手が嫌がることを、ボールが入っていない状況でもやり続けようと思っていました」
相手に身体を当てられる前に自分から当て、自分のエリアを確保する。簡単に懐へ入らせない。そこには、相手の肩書きに圧倒される姿など微塵もなかった。
「正直、いきなりの想定外の形での出番でしたが、出るとなった時はもう覚悟は決まっていました。どんな状況でも僕らはチャレンジャーなので、ビビらず行こうと決めました」
ピッチに立てば堂々としたプレーを見せる。これは鹿児島城西高時代から感じていたことだった。最終ラインで常に冷静に周りを見て、自分のエリアにボールが来たら鋭い予測とフィジカルの強さを駆使してボールを奪い取る。空中戦では圧倒的な存在感を放ち、ミドル・ロングキックの質も高い。
CBとして相当なポテンシャルを持っていた。実際に高校3年時にはJ2クラブから正式オファーが届いた。さらに関東の強豪大学からも熱烈なオファーが届いていた。その中で彼が選んだ進路はプロではなく、関東でもなく、関西の強豪・京産大だった。
「どのオファーも魅力的だったので、本当にギリギリまで悩みました」
高校時代から自覚していた課題は、アジリティ、判断のスピード、ビルドアップの質、そして最終ラインを統率する力だった。練習参加を重ねるなかで、自分の弱点も特徴も理解し、熱心に向き合ってくれると感じたのが京産大だった。
「自分のことを理解して、大事に考えてくれる指導者や環境でプレーしたかった。最後の決め手は指導者の熱量でした。自分の弱点を克服できれば、どこのプロチームに行っても通用すると思っています」
プロに行けなかったのではない。プロに行けるチャンスを手にしながら、あえて自分を磨くための時間を選んだ。
その決断から約8か月。京産大では当初、プレースピードについていけないこともあったという。しかし、小野ら能力の高い先輩たちやスタッフから指導を受け、最近では関西学生リーグ1部でも3バックの中央でスタメン出場するようになった。
「成夢さんにはビルドアップや統率の部分で、練習が終わったあともずっと個別に教えてもらうことが多くて、それが今日生きたと思っています」
尊敬する小野が退場し、急遽代役として投入されるという巡り合わせも、何とも興味深い運命だと言える。
もちろん、課題も突きつけられた。試合は後半16分にクルークスの直接FKで追いつかれ、同23分には天野に逆転ゴールを許し、1-2で敗れた。特に天野の得点場面について、浮邉は自身の判断の遅れを反省した。
「天野選手に対して自分が出ていくのか、ボランチについて行かせるのか、瞬時の判断が甘かった。1人少ないなかで相手は常に2つの選択肢を作ってくる。そういう状況でも守り切れる選手にならないといけないと思いました」
だが、数的不利の状況下で日本代表経験者に臆することなく挑み、自ら勝負を仕掛けた姿を見て、筆者の中にあった確信はさらに強まった。
浮邉泰士は、必ずプロの舞台に立つ。
高校時代に感じたその可能性は、大学という新たな環境で、着実に確信へと変わりつつある。まだ1年生。自ら選んだ4年間でどこまで成長し、どんなCBになってプロの世界へ飛び込んでいくのか。これからもその歩みを追いかけていきたい。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。



















