昨季王者を襲った「急失速」の罠 開幕4連勝から一転して泥沼化…中断前に激変したJ1勢力図

昨季J1を制した鹿島【写真:徳原隆元】
昨季J1を制した鹿島【写真:徳原隆元】

開幕8試合も首位・神戸から9位・岡山までが「6」差の混戦

 8月に開幕した2026-27シーズンのJ1は、第8節までを消化した。

 北中米ワールドカップ後では初となる日本代表の活動期間を迎え、J1リーグ戦は約3週間の中断に入っている。ルヴァンカップや天皇杯、アジアの大会を戦うクラブもあるため、すべてのチームにとって完全な休止期間になるわけではない。それでも、リーグ戦としては開幕後初めての長いインターバルだ。

 まだ8試合とはいえ、各クラブの特徴や現在地も少しずつ見えてきた。開幕から勢いに乗ったチームが失速する一方、試合を重ねながら順位を上げてきたチームもある。

 第8節終了時点で首位に立つのは勝点19のヴィッセル神戸。18で柏レイソルが続き、サンフレッチェ広島、FC町田ゼルビア、FC東京が17で並ぶ。さらに横浜F・マリノスが14、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、ファジアーノ岡山が13と続いており、上位はまだ大きな差がついていない。

 そのなかで特筆すべきは神戸の浮上っぷりだ。

 開幕3試合は1勝1分1敗だったが、第4節から5連勝。8試合で12得点と攻撃の数字が突出しているわけではない一方、5失点はリーグ最少だ。

 第8節のガンバ大阪戦。前半は相手の勢いに押されながらも耐え、後半に徐々に押し返すと、90分に途中出場のFWエリキが決勝点を奪った。試合を通して優位に立てなくても失点を抑え、終盤に勝点3を引き寄せたことは、5連勝中の戦いぶりを象徴している。

 その神戸を1ポイント差で追うのが柏だ。

 第8節では、それまで無敗で首位を走っていた町田を4-2で破った。前半からボールを保持して押し込んでいたにもかかわらず先制を許したものの、ハーフタイムの選手交代を機に後半だけで4得点。敵地で逆転勝利を収め、2位へ浮上した。

 昨季も優勝争いを演じた柏は、8試合で17得点。町田戦では交代策が得点につながったことも含め、攻撃の選択肢の多さを示した。

 勝点17では3チームが並ぶなか、それぞれが残してきた数字は興味深い。

 広島は、攻守の数字が際立つ。20得点は町田に次ぐリーグ2位、6失点は神戸に次ぐ少なさ。得失点差+14はリーグトップだ。第7節ではセレッソ大阪に6-1と大勝。続くアビスパ福岡戦では、前半に相手が2人の退場者を出し、9人で自陣を固める特殊な展開のなか、1-0で勝利した。数的優位を考えれば、より多くの得点を奪いたかった。それでも、カウンターやセットプレーへの警戒を保ちながら必要な1点を奪い、6得点した前節とは異なる形で連勝した。

 町田は開幕から続いていた無敗が7試合でストップしたが、それでも5勝2分1敗で、21得点はリーグ最多だ。柏戦では先制後も相手にボールを握られ、後半はセカンドボールを回収できず、押し返せない時間が続いた。

 開幕から大きく順位を上げたのがFC東京だ。

 町田との初戦では退場者を出して1-5と大敗したものの、その後は7試合負けなし。直近は3連勝を飾り、5勝2分1敗まで成績を伸ばした。

 特に数字として変化が表れているのが守備だ。最初の試合だけで5失点を喫した一方、その後の7試合では3失点。第8節の名古屋戦では先制後に高宇洋が退場し、残り約20分を10人で戦いながら1-0で逃げ切った。町田戦と同じように数的不利となりながら、今回は無失点で試合を終えている。

急失速の鹿島に必要な対応は?

 そして6位ながら、上位との対戦成績が目を引くのが横浜FMだ。

 開幕戦では2025年王者の鹿島に3-4で敗れたものの、その後は神戸を1-0、柏を2-0で破り、町田とは1-1。現在の上位3チームとの対戦を2勝1分としている。

 第5節から2勝2分の4戦無敗。第8節の水戸戦も2-0で勝利した。鈴木冬一と木村卓斗が今季初先発するなど起用の幅も広がっており、首位とは勝点5差で中断期間を迎えた。

 川崎はここまで3勝4分1敗の勝点13で7位。開幕から8試合で16得点を挙げている。山本悠樹と橘田健人を軸とした中盤が安定し、その土台ができたことで、左サイドではマルシーニョの個の突破力がより生きるようになった。水戸戦は1-0のクリーンシートで勝利した一方、直近の鹿島戦は3失点を喫して3-3。優勝争いに食い込んでいくためには、攻撃力を生かしながら守備をさらに安定させられるかがポイントになる。

 横浜FMとの開幕戦を制して4連勝でスタートした鹿島は、その後に急ブレーキがかかった。

 第5節の水戸ホーリーホック戦で今季初黒星を喫すると、浦和レッズ、神戸にも敗れて3連敗。4試合ぶりの勝利を目指した第8節の川崎戦も、3-2とリードして迎えた後半アディショナルタイムに追いつかれ、3-3の引き分けに終わった。

 最初の4試合で勝点12を積み上げながら、以降の4試合では1ポイント。順位も8位まで後退した。

 ただ、川崎戦では3得点を奪い、一度は逆転を許しながら再びリードするところまで持ち込んだ。一方で、最後まで逃げ切れなかったことに現在の課題も表れている。

 2025年王者の鹿島は首位と勝点6差。約3週間のリーグ戦中断期間をどう使い、再び勝点を積み上げられるかがJ1連覇の焦点になる。

 さらに、岡山も勝点13で9位につけている。

 4勝1分3敗。第5節から3連勝を飾り、第7節では浦和をアウェーで2-1と破った。第8節の京都サンガF.C.戦は後半アディショナルタイムに勝ち越しを許して1-2で敗れたものの、川崎や鹿島と同勝点で中断期間を迎えた。

 もちろん、現在の順位がそのままシーズンを通した力関係を示す段階ではない。それでも、開幕からの8試合でそれぞれの特徴は数字や試合内容にも表れ始めた。

 首位・神戸から9位・岡山までの勝点差は6。約3週間の中断を経て、この序盤戦で見えてきた勢力図がどう変化するのか。再開後の順位の動きに注目したい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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