日本でペドリ、イニエスタを量産できない訳 指導者の認識不足も…“消去法”になるポジション

バルセロナのペドリ【写真:ロイター】
バルセロナのペドリ【写真:ロイター】

インサイドハーフを活かす4-3-3

 4-3-3あるいは4-1-2-3システムは1970年代から普及していて、現在でも一般的なシステムの1つである。ところが、日本では馴染みがあるようでない。

 カタールワールドカップ(W杯)以前は森保一監督の下で4-3-3を採用した時期があったが、本大会は3-4-2-1となり、その後も4-2-3-1はあっても4-3-3は主力システムになっていない。

 明確に4-3-3を導入しようとしていたのはハビエル・アギーレ監督の時。アジアカップでは香川真司、遠藤保仁のインサイドハーフだったと記憶しているが、大会後に解任されてしまった。ちなみにアギーレ監督はメキシコ代表でも4-3-3を採用している。

 北中米W杯優勝のスペイン代表は4-3-3。ただ、これは攻撃時の配置であって守備は4-4-2がベースである。トップ下が守備ではFWと並んで最前列、攻撃では左右どちらかのハーフスペースに下りてインサイドハーフとして振る舞う。Jリーグでも一般的な4-2-3-1システムだ。

 アジア大会の日本代表(U-21)は4-3-3を使っている。

 守備では4-4-2のブロック。最前列2人のうち1人はFWと決まっているけれども、もう1人は固定していない。4-2-3-1のようにトップ下がやるのではなく、2人のインサイドハーフのどちらかが「2」に入る。形としては4-4-2で、機能性として4-3-3か4-2-3-1かには微妙な違いがあるだけだ。ただ、この微妙な違いが意外に大きな違いでもあり、4-2-3-1と4-3-3の思想的な相違でもある。

 要はトップ下かインサイドハーフか。

 守備で4-4-2の「2」を形成するだけならインサイドハーフとトップ下に違いはないが、2列目の「4」の方に入る選手はいわばボランチとして守備をする。つまり、トップ下よりも守備で要求される役割が広い。

 攻撃面でインサイドハーフとトップ下はほとんど変わらず、日本人にはインサイドハーフ適性を持つ選手も多い。技術が高く俊敏で判断の良いMF。しかし、本格的なインサイドハーフが多いかというとそうではない。インサイドハーフ適性のある選手は、およそ4-4-2のサイドハーフかボランチとして起用されているケースが多いからだ。

 典型的なインサイドハーフであるペドリ、アンドレス・イニエスタは足が速いわけではなく、パワーもない。技術は高いが見た目の派手さはない。彼らの真骨頂は認知と判断の能力である。状況をインプットした瞬間に弾き出すプレーのアイデアが素晴らしく、これこそがインサイドハーフに最も求められる資質である。

 おそらくペドリ、イニエスタが日本で育成されていたら、サイドハーフで起用されていたのではないか。ボランチを任せるにはフィジカルが足りず、トップ下としては得点力が物足りない。サイドとしてはスピードが足りないけれども消去法でサイド起用。

 情報処理能力が武器だから、頭脳に負荷をかけ続けたほうが能力は伸びるのだが、インサイドハーフのポジションそのものがない、あるいはその能力そのものを指導者が認識していなければ適性があっても発揮できない。日本でペドリ、イニエスタを量産できないとしたら、選手の適性より環境によるところが大きいのではないか。

 大岩剛監督がどういう意図で4-3-3を採用したかは分からない。1つはアジア大会ではボール保持の質が問われるからだと思うが、足技と体力ではなく、認知力と頭脳を活かした攻撃へシフトするきっかけになれば面白い。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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