プラティニ、ジダンの系譜継ぐ「新・新将軍」 名手不在の不安を一掃…エンバペ支えるオリーセの魔法

スウェーデン戦で2アシストの活躍
フランスが臨んだ決勝トーナメント1回戦のスウェーデン戦。2得点のFWエンバペ以上に強烈な印象を残したのは2アシストのMFオリーセだった。特に後半29分、相手のマークをかわしながら左足でエンバペの2点目をおぜん立てした高速スルーパスには驚愕。相手の強固な守備ブロックを1本のパスで切り崩してみせた。
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1次リーグから、その活躍は際立っていた。エンバペやデンベレら前線のスピードスターに合わせコースも速さも絶妙なパスを出す。自らも華麗なドリブルと巧みなシュートで相手ゴールに迫る。さらに、献身的な守備でもチームに貢献する。得点ランクトップのエンバペに負けない輝きを放っている。
前回大会の中盤には、名手グリーズマンがいた。エンバペらのゴールをアシストし、セットプレーのキッカーも務めた。守備と攻撃のつなぎ役として活躍した。24年に代表引退したが、復帰を求める声が出るなど不可欠な存在だった。
そんな不安をオリーセが一掃した。バイエルンでは右サイドでプレーするが、今大会は主にトップ下で出場。華麗なドリブルと多彩なパスでファンを魅了し、攻撃を牽引している。グリーズマンの穴を埋めてあまりある大活躍だ。
プラティニ、ジダンの後継者として期待する声もある。プラティニは1980年代にフランス代表を率い、華麗なパスサッカーの中心に君臨した。W杯こそとれなかったが、圧倒的な存在感で一時代を築いた。プラティニ引退後、低迷したフランス代表を救ったのはジダン。98年フランス大会でW杯初出場すると、チームの初優勝に貢献、2006年ドイツ大会では準優勝に導いた。
そんな偉大な先人と比較され、中には「プラティニとジダンを足したような存在」とまで高評価する元代表の解説者までいる。ジダンの力強さに、プラティニの華麗さ。超絶パスでエンバペらのゴールを演出し、得意とする右から切れ込んでの左足シュートなど多彩なシュートも持つ。何よりも、ボールを持つだけでファンを楽しませる。「将来のバロンドール候補」と言われるのもよくわかる。
プラティニのことを「将軍」と呼ぶのは日本だけ。本国での愛称は「王」だというが、やはり中盤を指揮しながら周囲を動かし、相手ゴールに攻め込む姿は「将軍」にふさわしい。プラティニの後継者として、ジダンは日本で「新将軍」。その系譜を継ぐ「新・新将軍」がオリーセだ。
スウェーデン戦の前半35分には、ゴール前の浮き球に反応して衝撃的なオーバーヘッドシュートを放った。ボールは惜しくも右ポストを叩いたが、決まっていたら今大会ベストゴール候補。前回大会のリシャルリソン(ブラジル)のオーバーヘッドを思い出させるスーパーシュートに世界中が沸いた。
悔しそうに両手で頭をかかえてピッチに寝転ぶ姿が、一瞬プラティニに見えた。85年12月のトヨタ杯、ユベントスの10番は芸術的なボレーでゴールを決めたがオフサイドでノーゴール。主審への抗議のために国立競技場の芝に寝そべった。意味は違うけれどオリーセのパフォーマンスに「将軍」を見た。
2回戦で対戦が予想されたドイツが敗退。W杯で3連敗中、プラティニの戴冠を2度阻み、過去7大会の決勝トーナメントで唯一敗れている(PK戦負けは除く)天敵が消えた。「お家芸」とも言われる内紛も、今のところは静か。レ・ブルー(フランス代表)が3度目の頂点に立った時、オリーセは「将軍」になる。エンバペはすごい。それでもあえて、フランス代表の攻撃に魔法をかけるオリーセを見ていたい。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。














