日本代表からの教え「メンタルだぞ」 “天才”の声にも滲む自覚「僕はそうじゃない」

中央大の長田叶羽【写真:安藤隆人】
中央大の長田叶羽【写真:安藤隆人】

中央大2年MF長田叶羽「ミスを恐れて挑戦しないことは自分の将来がなくなること」

 4月に開幕した大学サッカーリーグ戦。プロ内定選手、これからプロを目指す選手、そして大学という新たなステージに移行した選手たちが全国各地で激闘を繰り広げる。ここでは大学サッカーのステージで躍動する選手たちをピックアップしていく。今回は中央大の中盤で一際異彩を放つ2年生MF長田叶羽について。ガンバ大阪ユースからやってきた男は、1人だけ空間の使い方が違う。

【PR】ABEMA de DAZN 学割キャンペーン、最初の3ヶ月・月額980円で国内外の世界最高峰サッカーコンテンツが視聴可能に!

 170センチと大柄ではないが、彼がボールを受けると一瞬だけ空気が変わる。迫力なのか、独特の雰囲気なのか、とにかく「何をしてくるのか」と期待が一気に膨らむ。

 ボールを受ける前から常に首を振って周囲の状況を確認し、相手DFの視野に入るか入らないか、絶妙な位置にポジションを取る。そしてボールの動きを予測しながら、こまめにポジションを修正し続け、ボールが入った瞬間にダイレクトパス、ワントラップからのパス、ファーストタッチで相手を剥がしてからのパスと、それまでに収集した情報を一気にプレーに反映させる。

 彼の周りだけ時間の流れが少し違うように感じるから、プレーを見ていて本当に面白いし、相手からすれば常に嫌な場所にいて、タイミングをずらして嫌なことを仕掛けてくるのだから厄介極まりない。この自由かつ危険なオーラが彼の最大の魅力と言っていいだろう。

「あまり自分で意識はしていませんが、常に相手がどこを狙っているのかを見て、その逆を狙うようにしています」

 ここまではテクニックやパスに自信がある選手からよく聞く言葉だ。だが、彼にはその先がある。

「常に首を振っているのですが、サッカーはほんの0.1秒で景色が変わってしまうので、首を振る回数をただ増やすだけではなく、タイミングと角度など、自分にしっくりくるやり方を練習から意識してやっています。個人的には極論を言うと、ボールを見ずにトラップするなどができたらいいと思っています。ボールをもらう前、ボールが動いている時、そしてボールが来てからと常に顔が上がっている状態で、自然と周りの状況が把握できる状況にすることができる選手になりたいです」

 理想を思い求めるために、日常のトレーニングの中で大事にしていることがある。それはどんなトレーニングでも首を振る質、見える場所の広さと質にこだわっていることだ。例えば単純な4対2の鳥籠やポゼッションゲームの中でも、あえて強度がある中央に入っていってプレッシャーを受けながら、首を振って周りの状況を把握して次のプレーを選択したり、スペースに飛び込んだりと、シンプルな練習の中に独自の工夫を生み出している。

「G大阪ユースの時は上手い選手が多かったので、周りを生かす、バランスを整えてゲームを作ることをメインにしていました。自分が仕留めるというより、後ろから関わって、ボールの経由地になるイメージでした。でも、今の日本代表の選手を見ていても、それだけの選手は1人もいない。縦パスが刺せて、ゴールやアシストができるボランチしか選ばれていないので、僕はそこを目指さないといけない。高校の時よりリスクあるプレーをしていかないといけないし、ミスを恐れて挑戦しないことは自分の将来がなくなることを意味します。ビビることなくチャレンジしながら、その成功率を高めていかないといけないんです」

 G大阪でのトップ昇格はできなかったが、「大学サッカーといえば関東。関東の強豪で成長したかった」と中央大へ進学。攻撃に対する意識がさらに上がり、課題だったフィジカルを鍛えたことで、そのプレーには力強さと迫力が出てきた。そして、より高い位置でその独特の雰囲気を放ち、決定的なプレーをすることで怖さも増した。

 そんな彼には、プロへの道を歩む上で大きな存在となる先輩がいる。幼稚園の時から所属した西宮SS、そしてG大阪ジュニアユース、ユースと、小中高の大先輩であるMF堂安律だ。

「努力の人だと聞いています。高校1年生の時に個人留学でフライブルクに行かせてもらったのですが、その時に堂安さんがいて、『いいか、サッカーは本当にメンタルだぞ』と言われたのが印象的でした。西宮でも、ガンバでもあれだけ無双していた選手でも、プロに入ったら行き着く場所はメンタルなんだと思いましたし、僕も高校、大学と来て、ミスを恐れないことも重要なメンタルなんだと思うようになりました。どんなにミスをしても、挑戦することを止めない。どんな相手でも勇気を持ってボールを受ける、仕掛けることをやり続けるしかないと思いました」

 長田は周りから「天才」と呼ばれることもあったが、堂安の言葉を受けた彼にはそんな感覚や思考は一切ない。

「本当の天才だったら今ごろプロで活躍していて、とっくに海外に行っていると思います。僕はそうじゃないからこそ、自分が望む道に進むためには、ひたすら努力するしかないと思っています」

 貪欲に、前向きに。長田はより怖い選手になるための階段を着実に登っている。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

page 1/1

安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング