「疑惑」で優勝→44年後「幻」で涙 イングランドの皮肉な運命…直面した「歴史の大きな転換点」

1966年開催のW杯に臨んだイングランド代表【写真:Action Images/アフロ】
1966年開催のW杯に臨んだイングランド代表【写真:Action Images/アフロ】

W杯を彩る事件簿 今回は「ゴールライン」を巡って世界を揺るがした2つの因縁のシュートにフォーカス

 4年に一度、国の威信を懸けて激突するFIFAワールドカップ(W杯)。その長い歴史のなかでも、強豪国同士のライバル関係は数々のドラマを生み出してきた。今回は、W杯史において最も有名な「ゴールライン上の判定」を巡る因縁にフォーカスする。1966年大会の決勝で生まれた“疑惑のゴール”、そして奇しくも44年後に起きた“歴史の逆転劇”。この2つの因縁のシュートは、のちに現代サッカーのあり方を根本から変える引き金となった。

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 歴史の発端は、1966年に開催されたイングランド大会の決勝戦に遡る。開催国イングランドと西ドイツ(当時)という宿敵同士が激突した大一番は、2-2のまま延長戦へと突入する死闘となった。

 迎えた延長前半11分、伝説の場面が訪れる。イングランドのFWジェフ・ハーストが放った強烈なシュートは、クロスバーの下側に当たって真下に落ち、ピッチに弾んだ。ボールはゴールラインを完全に越えていないように見えたが、スイス人主審は線審(現在の副審)に確認したのち、ゴールインと判定。西ドイツの選手たちは猛抗議したものの、判定が覆ることはなかった。

 この1点で勢いづいたイングランドは、延長後半にもハーストが追加点を奪って4-2で勝利。サッカーの母国が悲願のW杯初優勝を飾った。

 ちなみに、この試合でハーストはハットトリックを達成。2022年カタール大会でフランス代表FWキリアン・エムバペが達成するまで、実に半世紀以上にわたって「W杯決勝史上唯一の記録」として燦然と輝き続けていた大偉業である。しかし西ドイツ側からすれば、あの3点目はいつまでも納得のいかない“疑惑のゴール”として深い因縁を残すことになった。

44年の時を経て起きた歴史の逆転 ランパードの完全なゴールが幻に…

 そして時代は流れ、2010年の南アフリカ大会。決勝トーナメント1回戦で、イングランドとドイツは因縁の再戦を果たす。この試合で、まるでサッカーの神様が1966年の帳尻を合わせたかのような、衝撃的な事件が起きた。

 ドイツが2-1とリードして迎えた前半38分、イングランドのMFフランク・ランパードがペナルティーエリア外から鮮やかなループシュートを放つ。ボールはクロスバーの下を叩き、今度は誰の目にも明らかなほどゴールラインの内側にバウンドした。

 イングランドの選手たちは同点ゴールを確信して歓喜の輪を作ろうとしたが、主審の笛は鳴らない。なんと、主審も副審もボールがラインを割ったことを見逃し、プレーを続行させてしまったのだ。

 リプレー映像を見れば一目瞭然の“完全なゴール”が取り消されるという大誤審。同点に追いつく絶好の機会を理不尽に奪われたイングランドは完全にリズムを崩し、最終的に1-4で大敗を喫して大会を去ることになった。

 1966年には「入っていないように見えたシュート」がゴールと認められ、栄光を掴んだイングランド。しかし44年後の2010年には「完全に入っていたシュート」がノーゴールと判定され、涙を呑んだ。相手がいずれもドイツであったことは、あまりにも皮肉な運命の巡り合わせだった。

 しかし、この2010年のランパードの“幻のゴール”は、全世界から猛烈な批判を浴びることになる。事態を重く見た国際サッカー連盟(FIFA)は、長年消極的だった「機械による判定支援」の導入へとついに舵を切る。

 この一件が決定的な契機となり、続く2014年ブラジル大会から、ボールがラインを割ったかを瞬時にミリ単位で判定する「ゴールライン・テクノロジー(GLT)」がW杯で正式に導入されたのだ。

 半世紀越しの因縁が生んだ、2つのセンセーショナルな判定トラブル。それは単なる誤審騒動にとどまらず、現代サッカーをより公正なものへと進化させる、歴史の大きな転換点となったのである。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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