異例の昇降格なし、PK戦導入「90点だった」 監督解任クラブも…百年構想リーグが成功した理由

今季のJ1百年構想リーグを戦った鹿島【写真:徳原隆元】
今季のJ1百年構想リーグを戦った鹿島【写真:徳原隆元】

鈴木満氏は鹿島のフットボールアドバイザーを務める

 シーズンの移行期という大きな変革の最中に開催された特別大会「百年構想リーグ」は、昇降格が存在しないという、Jリーグとしては極めて異例のレギュレーションのもとで行われた。この大会を現場やフロントはどのように捉え、戦ったのか。その真価を問う声は少なくない。鹿島アントラーズの強化責任者を長年務め、現在はフットボールアドバイザーを務める鈴木満氏に話を聞いた。(取材・文=森雅史/全5回の4回目)

【PR】ABEMA de DAZN 学割キャンペーン、最初の3ヶ月・月額980円で国内外の世界最高峰サッカーコンテンツが視聴可能に!

  ◇   ◇   ◇

「シーズン移行の狭間になにをするか。例えば、2025年のJリーグを3ステージ制にするというアイデアも出たくらい、いろんなレギュレーションを考えて、この百年構想リーグにたどり着きました。結果としては良かったと思いますよ」

 鹿島アントラーズの強化責任者として、四半世紀以上にわたりクラブのフットボール部門を率いた鈴木満氏。Jリーグ開幕当初から強化の最前線に立ち、クラブに21冠もの栄誉をもたらしたフットボールアドバイザーである。

 現在は日本サッカー協会の技術委員会強化部副部会長やJリーグのフットボール委員会委員を歴任し、日本サッカー全体の発展を見据えて提言を続けている。その鋭い洞察力と豊かな経験から紡がれる言葉は、常に日本サッカーの未来への重要な道標となる。

 大会前、多くの有識者やメディアの間では、昇降格がないことによるモチベーションの低下を懸念する声があがっていた。ともすれば、各クラブが新戦力や若手を試すだけの、実戦形式の練習試合として勝負が形骸化してしまうリスクを孕んでいたためである。しかし、蓋を開けてみれば、ピッチ上では激しい攻防が繰り広げられた。

「やっぱり、しっかりとしたリーグ戦としての形でやれましたしね。昇降格はないという状況ではあったけど、勝ち負けにこだわって鹿島はやれていたとも思います」

 鈴木氏は、ピッチ上に緊迫感が保たれた最大の要因を、関わるすべての人間のプロフェッショナリズムに見出している。プロとしての誇り、そしてファン・サポーターの目が、ダラダラとした戦いを決して許さなかった。

「テスト的な扱いになったり、勝ち負けにあんまりこだわらないで淡白なゲームになったりするのではないか。そういうところも危惧していたのですが、そんなことは全然なかった。結果的によかったと思っています。

 やっぱりプロなので、放映権であったり、マーケティングの部分でもスポンサーだったり、DAZNであったり、ステークホルダーに対して価値を出さなければいけない。いろんなことを考えて百年構想リーグに至ったわけですが、結構面白かったんじゃないかと思います。日頃は見られないPK合戦なども」

 実際にスタジアムには多くの観客が詰めかけ、普段の公式戦と変わらない熱気が満ちていた。特に、引き分け時に行われたPK戦の導入は、エンターテインメント性を高めるだけでなく、実戦での勝負強さを養う場として機能したと言える。

「鹿島は集客もしっかりできていたし、『特別大会』という意識もあまりなく、普段のリーグと同じような取り組みでやれていたと思います。やっぱりプロだから『ピッチでサッカーだけやっていればそれでいい』という世界ではない。サポーターもいますし、スポンサーやステークホルダーもいっぱいいますしね。責任ある立場で、責任のあることをしっかりやらなければいけないことは変わりはなかった。監督が解任されたクラブもありました。勝てなければ次へ繋がっていかないし、テストのような、いろんなことを試している雰囲気はどこにもなかったですね」

 勝たなければ次へ繋がらないという厳しさは、移行期の変則的なリーグであっても不変であった。結果として、この「百年構想リーグ」は単なるテスト期間ではなく、プロクラブとしての存在意義と責任を再確認する貴重な作品となった。

「チームを次のシーズンにつなげていく上でも、やっぱり試合に勝つ、勝負に勝つということが前提にありました。新シーズンに向けてチーム作りをしていくのだから、『勝たなくていい』と思ってやっているチームは、次になんか繋がらないですよ」

 では鈴木氏はこの「百年構想リーグ」を100点満点中、どれくらいだと考えたか。

「私は90点くらいだったと思います」

 変革期を乗り越えるための知恵と、関わる人間たちの高いモチベーションが結実した大会であったと、鈴木氏は高く評価していた。

(森雅史 / Masafumi Mori)



page 1/1

森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング