W杯優勝に必要な「特例枠」 森保Jには不在も…過去の歴史から見る“必勝法”

歴史から見るW杯の“必勝法”とは?【写真:徳原隆元】
歴史から見るW杯の“必勝法”とは?【写真:徳原隆元】

前回2022年W杯はメッシ擁するアルゼンチンが制した

 もし、日本代表に突出した選手が現れたとき、チームの作り方はどうなるのか?

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 森保一監督に聞いたことがある。「メッシみたいな選手が出てきて、1試合に2点絡んでくれるなら、その選手に合わせると思います」と、答えていた。ただし、「攻守をチームとしてある程度の水準でやれなければ勝てません」と言っている。

 現在の日本代表に「メッシ」はいない。一方で攻守を高い水準でプレーできる好チームになっている。では、特別な才能があるけれども、ほぼ守備をしない選手がいたらどうなるだろうか。それでも攻守の水準を保てるかどうか。これについては現時点ではわからない。「メッシ」がいないからだが、将来的には問われる課題かもしれない。

 2022年W杯、リオネル・メッシを擁するアルゼンチン代表が優勝している。メッシを守備免除の特例として、残りのフィールドプレーヤー9人が10人分の守備を請け負った。アルゼンチンだからできたのかもしれない。

 22年の優勝は3回目。その前は1986年大会だった。このときのアルゼンチンもディエゴ・マラドーナという特別枠を設け、他の選手たちが献身的に攻守を支えていた。こういう戦い方に慣れているのだ。

 1994年W杯ではマラドーナだけでなく、ガブリエル・バティストゥータ、クラウディオ・カニーヒア、アベル・バルボ、フェルナンド・レドンドを並べた攻撃的な編成だったが、マラドーナのドーピングによる出場停止の影響もあってラウンド16で敗退。2002年大会もマルセロ・ビエルサ監督の下、3-4-3の攻撃力のある優勝候補だったがグループステージで敗退している。アルゼンチンが優勝するときは、スーパーアタッカーに攻撃の全権を委ねて他の選手たちの献身で支えるパターン。初優勝した78年だけが総員攻撃型の例外だ。

 アルゼンチンの特別枠は1つだけ。86年にはリカルド・ボチーニという天才がいたがマラドーナと共存させていない。22年はメッシと同じ10番タイプのパウロ・ディバラがいたが、17分間しかプレーしていない。ゴンサロ・イグアインやセルヒオ・アグエロといった傑出したCFも、守備時にはトップ下のメッシより下がって守備をしていたのがメッシのいるアルゼンチンのやり方だった。

 マラドーナ、メッシとまではいかなくても、攻撃で違いを創り出せる特別な存在は各国にいる。ケビン・デブライネ(ベルギー)、モハメド・サラー(エジプト)、ソン・フンミン(韓国)、ハリー・ケイン(イングランド)は「1試合に2点」でなくても「1試合に1点」くらい創り出す能力者だ。ただ、彼らは30歳を超えていて、ある程度運動量をセーブさせなければならないだろう。攻撃の切り札を維持したければ、守備でハンデを負わなくてはならないわけだ。

 昔はブラジルを筆頭に強烈なアタッカーをずらりと並べるチームが強かったが、現在は全員守備ができないチームは不利になる。特別枠も1つが限度。キリアン・エンバペとビニシウスの2枠で回そうとしたレアル・マドリーはシャビ・アロンソ監督がクビになった。

 むしろ特例枠を持たない日本やモロッコのようなチームの方が、編成や戦術はシンプルで悩みが少ない。ただ、優勝を狙うとなればやがて直面する課題だろう。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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