バレエ→サッカーの異色キャリア「2歳半から」 内田篤人を“完コピ”…アスリート一家が生んだ日本代表

セレッソ大阪ヤンマーレディースでプレーする白垣うの【写真:増田美咲】
セレッソ大阪ヤンマーレディースでプレーする白垣うの【写真:増田美咲】

なでしこジャパン白垣「うの」 名前に隠された両親の愛

 女子サッカーの未来を考える――。5年目を迎えたWEリーグと、FOOTBALL ZONEは共同企画「WE×ZONE ~わたしたちがサッカーを続ける理由~」で、日々奮闘する選手たちの半生に迫る。第4回はセレッソ大阪ヤンマーレディースの日本女子代表(なでしこジャパン)DF白垣うの。彗星の如く現れた20歳の新星はA代表の舞台でもその名を刻んだ。連載第1回は、アイデンティティーともいえる「名前」に隠された驚くべき運命と、異色のルーツ「クラシックバレエ」がもたらした唯一無二の才能について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全4回の1回目)

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

   ◇   ◇   ◇   

 天真爛漫な笑顔を絶やさず、チームメイトから愛されるムードメーカー。20歳の白垣はC大阪の中心にいた。「うの!」「うの!」。響く周囲からの声に明るくユーモアを交えて応えていた。名前に込められた思い——。両親から授かった初めてのプレゼント「うの」が意味するのは一途な願いだった。

「スペイン語で『1(uno)』という意味なんです。何事にも一番を目指してほしい。1からしっかりやってほしい。名前の由来について両親からはそう聞いています」

 姉の名前はフランス語で「1(un)」を意味する「あん」。姉妹揃って「始まりの数字」を授けられ、常に初心を忘れず、高みを目指すのは必然だった。だが、白垣の物語が特別なのは、その名が単なる記号に留まらなかったことだ。

 2024年、追加招集でなでしこジャパンに初選出された。欧州遠征の2試合目、ノルウェー戦で代表デビューのピッチを踏んだ場所が、名前のルーツである「スペイン」だった。

「初めてスペインに行ったのが代表で。その場所で代表デビューができた。ストーリーができました(笑)。スペインで代表としての1歩目を踏めて良かった」

 運命に導かれるように、名前が意味する「1」の地で、なでしこへの道は幕を開けた。しかし、ここに至るまでは、決してサッカー一色ではなかった。

 ボールを蹴り始めたのは小学校1年生、7歳になる直前だった。きっかけは、2011年になでしこジャパンが世界一に輝いた熱狂。幼心にテレビの中のヒーローたちを見つめ「楽しそう、この中でやってみたい」と直感した。

バレエで培ったものがサッカーにも生きているという【写真:増田美咲】
バレエで培ったものがサッカーにも生きているという【写真:増田美咲】

バレエで培った“模倣”の力

 それまで、サッカーをやっていた父の影響で家には常にボールが転がっていたが、興味を示すことはなかった。むしろ、情熱を注いでいたのはクラシックバレエだった。

「2歳半くらいから始めて。姉の影響だったけど、大阪の堺でやっていました。発表会に出たりはしたので本格的ではあった。小4まではバレエとサッカーを並行していました」

 ピッチを駆ける現在の姿からは想像しにくいが、彼女の身体能力の礎は、しなやかな舞いの中で育まれた。そのバレエ経験こそが、のちに彼女のプレースタイルを決定づける“才能”を開花させる。

 バレエの恩師から言われ続けた言葉がある。「上手い人の真似をすることが一番大事」。白垣自身「完コピ(完全コピー)」というキーワードは脳内に深く刻まれていた。

「バレエをやっていて、サッカーに生きているなって思う瞬間、実はあんまり感じないんですよね(笑)。でも真似をするのは得意。バレエの先生に言われた模倣は大事だと思ってずっとやってきた。U-20の代表の時も、トップレベルの選手の映像を見て、守備の止め方をそのままやってみたらできた、ということがたくさんあった」

 教科書としたのは、かつてドイツの名門シャルケで右サイドを支配した元日本代表DF内田篤人のプレーだった。

「シャルケ時代の内田選手の動画をすごく見て参考にしていた。特にU-20代表の時はセンターバックをやっていたので、足の速い選手への対応の仕方とか、相手の止め方。体の強い選手に対しての止め方は流れの中でできたこともあった。自分の中に落とし込みましたね」

 模倣から創造へ。バレエで培った「見て、真似る」という観察眼は、ピッチの上で強固なディフェンス力へと変換された。だが、バレエとの決別は突然やってきた。小学校4年生の時、通っていた教室が閉鎖されることになった。

「先生が高齢になられたこともあって。そこからもう、サッカーに切り替えた。中1になるまではずっと、バレエの名残で前髪を上げていたけど、中1の冬くらいにバッサリ切って。反動じゃないけど、超“オン眉”にした。トレードマークです」

祖父に両親がスポーツ大好き 生んだ「負けず嫌い」精神

 バレエで見せた「全力でやり切る」姿勢は、サッカーにも引き継がれた。祖父は陸上、父はサッカー、母は新体操。小4までは水泳や陸上もこなし、常にスポーツのDNAを刺激し続けてきた。アスリート一家に育った白垣にとって、体を動かすことは呼吸をするのと同じだった。

「負けず嫌いというか、できないことがあったらムキになることが多かった。でも、それを『頑張ってやっている』というよりは、いつも通りやるべきことをやっている感覚だった」

 淡々と、徹底的に。積み上げた姿勢が今につながっている。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング