18歳久保瑛史が語った心境「もっとうまくなれる」 スペインから帰国3か月…兄・建英との関係は?

清水戦で初のベンチ入りを果たした久保瑛史
森保ジャパンの中心を担う久保建英の実弟、久保瑛史がレアル・ソシエダの18歳以下のチーム、フベニールBからJ1のセレッソ大阪に新天地を求めて3か月が経った。ピッチに立つ機会こそ訪れなかったものの、11月9日の清水エスパルスとのJ1リーグ第36節では加入後初のベンチ入りを果たした18歳のボランチは、何を追い求めて母国・日本でのプレーを選択し、現状に対してどのような思いを抱いているのか。(取材・文=藤江直人)
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ちょっぴり意外な言葉が返ってきた。森保ジャパンが臨むガーナ、ボリビア両代表との国際親善試合2連戦に招集された6歳違いの兄、久保建英が日本に滞在している間に連絡を取り合う予定はあるのか。こう問われたセレッソ大阪の久保瑛史は、間髪入れずに「いや、ないですね」と首を横に振った。
「家族ですけど、選手のプライベートと言えばプライベートなので。もちろん必要なときには連絡を入れますけど、何て言うんですかね、(進んで)話したいとはあまり思っていないですね」
決して仲が悪いわけではない。むしろその逆で、今年6月にスペイン国内の高校を卒業した久保が、18歳の誕生日を目前に控えていた同8月にレアル・ソシエダのフベニールBからセレッソへ移籍した際には、兄から「やりたいようにやれ。自分で決めろ」と冷徹に聞こえるようで、実は熱いエールを送られている。
プレーする国は別々になっても、プロサッカー選手としてお互いをリスペクトし合いながら、ともに信じる道を歩んでいく。そこには特別な言葉は要らない。日本代表が通算14試合目の対戦で、サッカー王国ブラジル代表から悲願の初勝利を逆転でもぎ取った10月も、そうした関係は変わらなかったと久保は振り返る。
「家族として連絡はしましたけど。おめでとうとか、そんな感じで、それ以上は何もないですね」
久保がこう語ったのは、清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平へ乗り込んだ9日のJ1リーグ第36節後の取材エリアだった。前半だけで3ゴールを奪ったセレッソが、最終的に清水を4-1で一蹴して3連勝をマークした一戦で、久保は追加登録されてから11試合目で初めてベンチ入りを果たしていた。
デビューはお預けも…見つめる現実「そういう世界」
清水戦で久保が主戦場とするボランチで先発したのは喜田陽と中島元彦。後半11分には途中出場の田中駿汰が中島とポジションを入れ替えてボランチに入り、後半アディショナルタイムの46分には喜田に代わって香川真司が出場。5枚目の交代カードが切られたこの瞬間に、久保のデビューはお預けになった。
「早めに3得点を取れたし、試合展開もよかったので、もしかしたらあるかもしれない、という気持ちで準備していました。もちろん悔しかったですけど、同時にそういう世界だというのも理解しているので」
雨脚が激しさを増していった90分間で、出番なしに終わった胸中を明かした久保はさらにこう続けた。
「まずはチームが勝ててよかったのと、もうひとつはベンチからいつもとは違う視点で試合を見られた今回は大事な経験になったし、それもよかったと思っています。ピッチの近くで見るのは他の、例えばスタンドから見るのとはまったく違いますし、緊張感も肌で感じられる。ヒナタくん(喜田)や駿汰くん(田中)、そして真司さん(香川)は見習うべきものが数多くある選手ですし、間近で見られて自分ももっとうまくなれると思いました」
兄がバルセロナの下部組織を退団した2015年3月に、バルセロナへ生活拠点を移していた久保も一緒に帰国。FC東京の下部組織入りした兄とは異なり、横浜F・マリノスの下部組織に所属して心技体を磨いていた久保は、兄がレアル・ソシエダへ完全移籍した2022年8月に後を追うようにソシエダへ加入した。
しかし、ユースから18歳以下のフベニールBへ昇格して3年目を迎えていた今夏に大きな決断を下した。毎年夏場に一時帰国していた久保のもとにセレッソから練習参加の打診が届き、アピールに成功した結果として正式なオファーとなった。プロ契約を結び、プレーする環境を激変させる決断へ迷いはなかったと久保は明かす。
「何かしらの変化が必要だと感じていたので、そういった決断をくだしました」
久保が自らを客観視し、いま現在の自分に足りないと判断したのがプレー強度の高さ。今シーズンから指揮を執るオーストラリア出身のアーサー・パパス監督のもと、ハイプレスとハイライン、ハイインテンシティーに状況や試合展開によってボールを保持する時間も設けながら戦うセレッソは理想と言えるチームだった。
久保が掲げる目標は「今シーズン中に試合に出る」
加入から3か月あまり。久保は自身のプレーが、いい意味で変わりつつあると感じている。
「日本に慣れてきたのもあるし、J1リーグのなかでプレーの強度が高く、なおかつボールをもつチームのなかで、僕のポジション的に近い他の選手のプレーを見て、盗んで、自分の選手としてのクオリティーを上げられていると実感している。セレッソに加入したときに『今シーズン中に試合に出る』と言いましたけど、いまもまず目指しているものは変わりませんし、ちょっとは近づいたんじゃないかと思っています」
清水戦前日に告げられたベンチ入りを「素直にうれしい」と振り返った久保は、さらにこう語っている。
「このままベンチに入り続けて、そのうえで出場できれば、もう一歩違うところにいけると思っています」
今シーズンに残された公式戦はリーグ戦の2試合だけ。敵地でマリノスと対戦する30日の第37節か、ホームのヨドコウ桜スタジアムに横浜FCを迎える最終節で、必ず「26番」を背負ってピッチに立ってみせる。
ポジションも、利き足も、身長180センチ・体重73キロのサイズも、中盤の底からボールを前へ運びながら相手を一枚剥がし、そこから長短のパスを駆使してゲームメイクするプレースタイルも、もちろん兄とはすべてが異なる。それでも大きな可能性を秘めた18歳は、まずは短期的な目標をかなえるためにアピールを続けていく。
(藤江直人 / Fujie Naoto)

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。





















