痛み止め打ち“強行出場” 覚悟の移籍1年目…掴んだ頂点「非常に苦しい2か月でした」

天皇杯優勝を果たした町田・岡村大八(右)【写真:徳原隆元】
天皇杯優勝を果たした町田・岡村大八(右)【写真:徳原隆元】

町田の岡村大八「前のチームの方が喜んでくれるのは、僕もやっぱり嬉しい」

 FC町田ゼルビアは11月22日、国立競技場で行われた天皇杯決勝で、ヴィッセル神戸に3-1で勝利した。右膝の靱帯を痛めて離脱中だったDF岡村大八は、この一戦に痛み止めを打って強行出場。後半途中から入ってFW大迫勇也を見事に完封し、「ドクターとかトレーナーとかと色々相談して」と舞台裏を明かした。

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 9月23日の京都サンガF.C.戦で負傷交代となった岡村。当初は、11月4日に行われたAFCチャンピオンズリーグエリートのメルボルン・シティ戦で復帰する予定だったが、まさかの再受傷。11月16日のFC東京との準決勝も「ちょっと痛みが強すぎて、この痛みだとチームに迷惑かけるな」と、出場を回避していた。

 約2か月にわたった離脱の間に、リーグ戦の優勝を逃してしまったことにも責任感を感じ、「天皇杯は間に合わないかもしれないという感じではあったんですけど、ドクターとかトレーナーとかと色々相談して、痛み止め打ってきょうは出場しました」。後半32分に投入されると、ピッチで歓喜の瞬間を迎えた。

「受傷してからけっこう苦しかったですし、メンタル的にもこれだけ長く試合を空けたこともなかったので、個人的には非常に苦しい2か月でした。こうしてピッチに立つことができて、それが天皇杯の決勝で、みんなとこうして優勝を掴み取れたことを非常に嬉しく思います」

 筋力トレを欠かさず、鉄人とも呼ばれるほど屈強な肉体を持つ岡村。「相手との接触で事故みたいなものだったので、誰を責めるとか自分を責めるとかもせず、1日でも早く治すことだけを考えて、私生活でも食事だったりそういったところも考えてきたので」と手術を回避し、気合いで大舞台に間に合わせた。

 そしてピッチに立つと、大迫にいきなりタックルをお見舞い。チームメイトに「お前、相撲やってたんか」と言われたほどの勢いで、膝も問題なかったと言う。しかし、「再受傷したというのがデカくて、またやってしまうんじゃないかとか、そういったところの恐怖心だったりが強くて」と不安と戦っていた。

「90分ゼロで抑えてこそ自分の存在価値を証明できると思うので、まだまだ途中出場というところにも満足していませんし、長い間ピッチを空けたのでそこに対する責任もあります。まず監督の信頼を取り戻すところから、また一からのスタートだと思うので、練習からやっていければいいかなと思っています」

 昨オフ、北海道コンサドーレ札幌から加入。J2降格を味わったなかで覚悟の移籍だったが、「まずタイトルを獲れたというところで、移籍してきて良かったというか。前のチームの方々も、僕が移籍してこうやってタイトルを獲ることを喜んでくださるサポーターもいると思うので」と古巣への感謝も忘れない。

「インスタやXにいただいたメッセージも、目を通しています。前のチームの方が喜んでくれるのは、僕もやっぱり嬉しい。『寂しいけどタイトル獲ってくれて良かった』と言ってくれるのも、自分に深く刺さるものもあります。そういった方々のためにも、こうしてタイトルを獲れて良かったと思っています」

 そのような考えを持つのも、プロ1年目に当時JFLのテゲバジャーロ宮崎でのプレーを経験した苦労人だから。「まだまだ、そんなんで希望を与えられるとは思っていない」と謙虚ながらも、「そういう選手でもJ1の舞台で活躍したり、タイトルを獲れるところを、背中で見せ続けなければいけないと思う」と語る。

 紆余曲折を経て辿り着いた自身初タイトルに喜びもひとしおだが、すでに視線は未来へと向いている岡村。「これに甘んじることなく、今年度また来年度、そういったところに絡めるようにやっていければいいかなと思ってます」。まずは、11月25日に控えるACLEのアウェー江原FC戦へ、黙々と準備を進めていく。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



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