トッテナムからオファーに「マジか」 1時間面談で“即決”…20歳でプレミア挑戦の訳

高井幸大は今夏にプレミアリーグ挑戦を決意
この夏、1人の若者が海を渡った。21歳の日本代表DF高井幸大は川崎フロンターレからイングランド・プレミアリーグのトッテナムへ完全移籍。アカデミーから育った愛するクラブを離れ、ロンドンへ渡った。ビッグクラブに移籍後すぐ負傷に見舞われ、離脱を強いられた高井は、今何を思っているのか――。移籍を決意した理由を現地で直撃した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の1回目)
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ロンドン中心から北に電車で約1時間。すっかり冷え込んだ11月のイギリスで、ひときわ活気にあふれていた約6万人収容のトッテナム・ホットスパー・スタジアム。平日にもかかわらず、午前9時半のグッズショップ開店時間には行列をなし、この日常こそが街全体のエネルギーとなっていた。そこからまだ北に約10キロ。赤く色づいた落葉樹が並び、多くの自然に包まれた環境に練習場はあった。
2025年7月、当時20歳だった高井の移籍が発表された。あれから約4か月。負傷の影響でいまだ試合のピッチには立てていないものの、異国で奮闘する高井は晴れやかな表情で現れた。
「ロンドンは比較的住みやすいですし、慣れました。英語もトッテナムに先生を用意してもらって、毎日やっているので最初よりチームメイトともコミュニケーションを取れるようになってきました」
スターダムにのし上がった。2023年にトップ昇格を果たし、J1デビュー。24年にはパリ五輪を経験し、同年9月に初の日本代表入り。北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選にも出場し、より高みへと意識が向いていた。そのなか、今夏届いたのがトッテナムからのオファーだった。
「マジか、とは思いましたね。びっくりしました。僕を見ていてくれていたんだと嬉しかった。サッカー選手をやっていればよくあると思うんですけど『興味あるよ』というのは。それぐらいかと思っていたら、本当にオファーが届いたので」
まさに青天の霹靂。プレミアリーグへの移籍が現実に近づいた。トッテナムはすぐにミーティングを設定してくれ、約1時間も高井に対して誠意をぶつけてくれた。

シャイな性格も脱却して「溶け込もうと」
「すごくトッテナムからの熱意を感じました……すごく。自分をどういうふうに評価してくれているのか、足りないところも伝えてくれましたし、それ以上にトッテナムというビッグクラブに惹かれましたね」
即決した。ただ、最後まで何があるかはわからない。家族にすら報告しなかった。報道で知った母からは「本当なの⁉」と連絡が。高井も「伝えられなくてごめんね」と謝り、自らの覚悟を示した。
川崎時代の寮生活からも脱して現在は一人暮らし。ロンドンへ渡り、約1週間しか通訳をつけなかった。とにかく早くチームに馴染みたかったため、積極的に英語で自ら話しかけた。「なんとか溶け込もうと。いい人たちばっかりで楽しくやらせてもらっています」。その姿を周囲はもちろん見ていた。日本から来てすぐ負傷で苦しんだ若者の努力を受け入れた。
トーマス・フランク監督からは「基本的にサッカーの話ですけど、いろんな話をしてもらえた」という。また、コーチからも「『お前は大丈夫だぞ、お前はいいぞ』と声をかけてもらえて、気にかけてもらえているのを感じますね」と、新たな環境でも着実に歩んできた。
プレミア、ビッグクラブの整った設備に「本当すごいですよね!」と驚く初々しさは残っている。だが、その顔つきは渡欧前とは違う、経験値を積んでたくましさが増していた。日本の未来を背負う21歳DF。駆け上がった先に見る景色を心待ちにしていたい。




















