全国舞台で無情ポスト「自分のせい」 涙を止めた仲間の言葉…悔しさ晴らすプロへ「憧れられる側として」

日本航空高校では全国へ出場し10番を付けた
女子サッカーの未来を考える――。5年目を迎えたWEリーグと、FOOTBALL ZONEは共同企画「WE×ZONE ~わたしたちがサッカーを続ける理由~」で、日々奮闘する選手たちの半生に迫る。第2回はRB大宮アルディージャWOMENのMF大島暖菜(はるな)。連載最終回は、WEリーガーになるまでにぶつかった壁について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全4回の4回目)
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届かなかった。地元の東京を離れて山梨・日本航空高校へ入学を決意。目標は全国の舞台だった。中学までは街クラブでサッカーに集中し、“本気”で頂点を目指すようになったのが高校に入ってからだった。周囲の環境、寮生活で生まれた仲間との絆。コーチ、監督の指導も大島の目標を後押しした。
「私たちはそもそも関東大会で優勝したことがなくて、全国大会出場というのは大きな壁だった。だからまずは関東大会で優勝しよう、というところから始まった。そのためには練習から突き詰めないといけないというのは先輩たちとも話していました」
その“壁”とは東京の十文字高校。全国高校女子サッカー選手権でも優勝経験がある常連校は立ちはだかる最大のライバルだった。2007年の創部以降、全国屈指の強豪へと成長を遂げるまで、大島らの世代は土台を築き上げたとも言える。高校2年生の時には10番を背負って選手権に出場。だが、甘くはなかった。
「簡単じゃないとは分かっていたけどどこか『いけるでしょう』という考えで挑んでしまって、初戦で負けてしまいました。これを経験して『やっぱりもっと細部を詰めないと』と考えを改めた。関東大会で優勝できて全国に行けたけど、負けたことはいい経験になった。これを3年生になる前に経験できたことは自分の中でも大きかったし、漠然としていた目標の全国優勝が『目指せないものでもない』と明確になった」
高校1年生の時には新型コロナウイルスの蔓延で全国高校総体が中止となり、先輩たちの涙を見た。2年生では“弱さ”を思い知った。3年生ではゲームキャプテンへ。立場の変化によってのしかかった重みを前向きに捉えることができていた。
最後の選手権で名門と激突「全国が終わってしまった」
「自分がやらなきゃ勝てないとすごく感じることが多くて、ゲームキャプテンを任された時は自分の中でも責任感を持つことができていました。チームのことを考えると自分のことが疎かになってしまって、切り替えの難しさはありました。自分の中で一番濃かったのは3年生の選手権。責任の重みが違って、自分がやらなきゃと少し辛い部分もあった。みんなが救ってくれたのも事実だし、なんだか高校生っぽくてよかったな、と。一番自分にもチームにも向き合えた」
最後の選手権。すでに大宮への加入が内定していた大島の脳裏に焼きついているのが名門・常盤木学園(宮城)戦だ。1点リードを許しているなかで決定機が訪れた。大島、渾身のシュートは無情にもポストを叩いた。「全国が終わってしまった……。自分のせいだ」。責めて、責めて、責め続けた。その時に仲間の一言に救われた。
「問題ない。プロとして悔しさを晴らしてくれればいいよ!」
高校2年生の時にWEリーグの存在を知り、大学サッカーも意識したなかで大宮の熱意に感銘を受け、“WEリーガー”として生きていく道を選んだ。現在はWEリーガーとなって4シーズン目。当時、仲間がかけてくれた言葉を胸に刻んで、真正面から日々戦っている。
「自分もなでしこジャパンに憧れてサッカーを始めた。今度は憧れられる側として見せ続けていかないといけない。大宮はアカデミーもあるので、そういう子たちも身近にいる。女子サッカーには女子サッカーの魅力があって、それをみんなに感じてほしい。チームを勝たせるために1試合1試合臨んで、ゆくゆくは世界で戦いたい」
主将のDF杉澤海星(みほし)から「副キャプテンになってほしい」と声をかけられ、今季はリーダーの自覚が増した。
「今まで通りの覚悟じゃダメだと感じていた。最初は嬉しかったけど、すぐに責任を持ってやらないと、と思いました。でも気負いすぎないで自由にやりたい」
サッカーを始めたころから今まで、覚悟を示してきた大島。壁にぶち当たっても強い思いで“プロ”の道を切り開いてきた。周囲を巻き込む力があるからこそ、これからの未来も自身の人生を示し続けるはずだ。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)






















