稀に見る大混戦のJ1残留争い ”7チーム”巻き込み佳境へ…主役を張る2クラブの現在地

J1残留争いはまれに見る大混戦【写真:徳原隆元】
J1残留争いはまれに見る大混戦【写真:徳原隆元】

福岡、名古屋、東京Vを巻き込む大混戦も

 明治安田J1リーグは残り6試合となり、優勝争いと並んで注目を集めるのが残留争いだ。シーズン序盤から混戦模様を呈してきた下位グループは、いよいよ数字的にも現実的にも振り落としの局面を迎えている。中位に位置するチームも決して安泰とは言えず、終盤にかけて一戦ごとに立場が変動する可能性を秘めている。

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 現在、最も厳しい状況に立たされているのがアルビレックス新潟だ。シーズンを通じて勝ち点の積み上げに苦しみ、入江亨監督に交代してからも、チーム全体の歯車がかみ合わないまま時間だけが経過した。攻撃面では形を作る場面も見られるが、肝心のフィニッシュ精度を欠き、守備では要所で粘りを欠いた。勝ち点差を考慮すれば、残留の可能性は「絶望的」と表現せざるを得ない。しかし、わずかでも可能性がある限り、背中を押すサポーターを前に、無抵抗で降格を受け入れるわけにはいかない。

 19位の湘南ベルマーレも降格の危機に瀕している。スタートダッシュに成功したが、徐々に進む相手の対策を上回れず、夏場を前に失速。その後、頼れる守護神だった上福元直人の離脱や主力3人の欧州移籍など、戦力的な低下も少なからず尾をひく形で、現在は17位の横浜F・マリノス、18位の横浜FCから勝ち点6も離されている。得失点差を考えても、実質的に7の差があると言って良い状況から、最後の巻き返しはあるのか。数字上の可能性はともかく、次のホームで戦う東京ヴェルディ戦が、残留に望みをつなぐための最後の糸を掴む戦いになりそうだ。

 横浜の2クラブ、マリノスと横浜FCが残留争いの“主役”と言える。順当に行けば、この2つのチームのうち、どちらかがJ1に残り、どちらかがJ2に落ちる。ただし、それは残留ラインが勝ち点37、38ぐらいになればの話で、この2チームがここから2、3試合で、勝ち点を大きく積み上げることができれば、勝ち点37で14位のアビスパ福岡、勝ち点36で並ぶ名古屋グランパスと東京Vあたりも巻き込まれる可能性がある。

 もちろん、今週末の試合で名古屋がホームでセレッソ大阪、東京Vが湘南とのアウェーで勝利すれば、その危険は限りなく小さくなるが、福岡に関しては代表ウィークによる中断期間を前にして、横浜FCを博多の森に迎えての一戦があり、もし敗れることがあれば、少なくとも横浜FCには勝ち点3差まで詰められることになる。

 横浜FCは三浦文丈監督になってから、現実的な戦い方に向き合いながらも、タレントのリソースをうまく活用して、着実に取れる勝ち点を拾えるようになっており、ここ5試合負けなしという結果に表れている。夏の移籍で加入した、34歳のFWアダイウトンの獲得も大ヒットだった。ただ、新潟や湘南とのホームゲームを終えて、ここから厳しい上位との試合をメインとした戦いが待っているため、スリリングな終盤戦になることは間違いない。

 もう1つ、横浜FCにはクラブ初の国内三大タイトルとなる、ルヴァン杯の戦いもあり、サンフレッチェ広島とのホーム&アウェーに勝利すれば、ファイナルに進出できる。幸い、準決勝も11月1日に予定される決勝も、リーグ戦と被ることはなく、むしろ高い強度を維持できることを強みとして、リーグ戦に向かっていくことができることを強みにしたい。

 例年タイトル争いに絡んできたマリノスだが、昨年に続き、今シーズンも早期の監督交代を経験し、さらに繰り返すという大混乱に陥った。そこから3人目となった大島秀夫監督が、割り切った采配で何とか立て直している状況だ。特にアウェーのFC東京戦で、3-0から最後3-2に追い詰められながらも、勝ち点3をもぎ取れたことは大きい。ただ、前半戦から主力の怪我に泣かされていたところに、松原健やジャン・クルードと言った怪我人が出てきており、苦しい戦いが続いている。ここから6試合の対戦相手も平均5.3位となり、現状のマリノスからすると、全てが”格上”との対戦になる。

 マリノスの次の相手は、優勝を目指せる位置にいる4位の柏レイソルだ。もしホームで、下位のマリノスを相手に勝ち点を落とすことになれば、首位を走る鹿島アントラーズを追い抜くどころか、2位以内に与えられるACLエリートもかなり難しくなる。柏にとっても勝ち点3しか許されない状況だが、マリノスがルヴァン杯の準々決勝で敗れた相手に勝利すれば、ライバルの横浜FCに大きなプレッシャーをかけることができる。

 横浜FCが福岡に勝利するのか、そしてマリノスの柏戦の結果によって、福岡、名古屋、ヴェルディも巻き込んだ大混戦になるのか、湘南を含めた、神奈川3チームによる残留の残り1枠をかけたサバイバルになるのかは今週末の試合結果で、大きく見えてくる。湘南としては残留ラインが40を超える戦いになってしまうと、逆転残留のチャンスがほぼほぼ無くなってしまうので、まずは目の前のヴェルディを倒して、マリノスや横浜FCの結果に望みをかけるしかない。新潟はもっと厳しいが、周りの結果よりも自分たちに矢印を向けて、一戦必勝で行った先に、奇跡が待っているかもしれない。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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