J1で6人だけ…優勝争いを支える驚異の”タフネスガイ” 指揮官が求める「食事と睡眠」

今季好調の柏を支える古賀太陽【写真:徳原隆元】
今季好調の柏を支える古賀太陽【写真:徳原隆元】

好調な攻撃陣の裏で…チームをどっしりと支える古賀太陽

 J1リーグ戦で優勝争いを演じ、ルヴァンカップではベスト4に進出している柏レイソルを、ディフェンスリーダーの古賀太陽が驚異のタフネスぶりで支えている。リーグ戦で開幕から28試合連続フルタイム出場中の26歳は、過密日程下で行われた今月上旬の横浜F・マリノスとのルヴァンカップ準々決勝2戦でも当然のようにフル出場。心技体で絶好調を奏でている鉄人が大事にしている2つの要素を追った。(取材・文=藤江直人)

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 いよいよ終盤戦に差しかかった今シーズンのJ1戦線で、2月中旬の開幕からすべてのリーグ戦で先発し、なおかつフルタイム出場を続けているフィールドプレイヤーが何人いるかご存じだろうか。

 答えはわずか6人となる。ACLEの関係で消化試合数が多いFC町田ゼルビアのDF昌子源の29試合・2610分を皮切りに、鹿島アントラーズのDF植田直通、浦和レッズのマリウス・ホイブラーテン、横浜FCのDFンドカ・ボニフェイス、名古屋グランパスのMF稲垣祥、そして柏レイソルの古賀太陽が28試合・2520分で続く。

 そのなかで柏、浦和、横浜FCが勝ち上がっていたルヴァンカップで、3日と7日に行われた準々決勝でともに先発フル出場したのは古賀しかいない。8月31日のアビスパ福岡とのJ1リーグ第28節から中2日で横浜F・マリノスとの第1戦、さらに中3日で第2戦と8日間で3試合を戦う過密日程でピッチに立ち続けた。

 敵地・日産スタジアムで4-1、ホームの三協フロンティア柏スタジアムで1-0と、2戦合計スコア5-1でマリノスに圧勝し、準決勝進出を決めた第2戦後に古賀に聞いた。疲れを感じていないのか、と。

「実際にプレーしている時間帯の暑さのピークは若干越えたかな、という気がしているので、多少体が動きやすくなっている感覚はありますね。今日に関しては相手にスプリントさせられるシーンというのもあまり多くなかった気がするので、それも含めて体的には全然問題はないかな、という感じはしています」

 ゲームキャプテンとしてクリーンシートに貢献した古賀は、柏でも直近の3試合すべてで先発フル出場した唯一のフィールドプレイヤーだった。第2戦のキックオフ時の気温が27.7度。福岡戦の30.4度、第1戦の29.8度に比べれば確かに下がっているものの、それでも驚異のタフネスぶりには感服せざるをえない。

公式戦36試合のうち33試合で先発フル出場

 過去5シーズンのリーグ戦を振り返っても、古賀が欠場したのはわずか6試合。そのうち2試合は出場停止だった。プレータイムの合計は1万5467分に、稼働率は実に96.5%に達していた。怪我にもコンディション不良にもほぼ無縁だったタフネスぶりに、今シーズンはさらに拍車がかかっていると言っていい。

 ここまで柏が臨んだ公式戦36試合のうち33試合で先発フル出場。ピッチに立たなかったのは福島ユナイテッドとのルヴァンカップ1stラウンド2回戦と、レノファ山口との同3回戦、そして東洋大学との天皇杯2回戦だけ。山口戦と天皇杯はベンチ入りメンバーからも外れたなかで、後者では大番狂わせを起こされている。

 日本代表に目を移せば、7月には約5年半ぶりに森保ジャパンへ復帰。韓国で開催された東アジアE-1サッカー選手権の香港代表戦と韓国代表戦にそれぞれ先発フル出場。チームの優勝に貢献している。

 特に記録的な酷暑が続き、選手たちの体を蝕んだはずの今シーズンの夏場をいかにして乗り越えてきたのか。今シーズンから指揮を執るスペイン出身のリカルド・ロドリゲス監督の要求があると古賀は振り返る。

「食事と睡眠の部分に関しては、監督からチーム全員に要求されていますし、その点に関してはみんなと違うことをやっているつもりはないですけど。ただ、コンディションを崩さないような時間の過ごし方、というのは意識しています。休息というか、体を回復させる時間はすごく大事にしなきゃいけないと思ってきました」

 具体的にはどのように過ごしているのか。具体的な数字をあげながら古賀が睡眠について続ける。

「基本的に8時間は取っている感じですね。6月以降はナイトゲームが続いていますし、トレーニングも午後のセッションが多いので、たとえばナイトゲームがある日などはちょっと早めの昼食を取って、食べ終えた後に30分くらいの仮眠を取るような工夫をしていますし、そのへんはうまく自分のリズムを見つけられています。食事もチームで出されるものを基本的に食べていますし、そこはチームでもうまくコントロールしてもらっています」

Jリーグとルヴァンカップの2冠を狙う【写真:徳原隆元】
Jリーグとルヴァンカップの2冠を狙う【写真:徳原隆元】

Jリーグ優勝争いも佳境へ

 未曾有の大混戦が続くリーグ戦で、柏は首位の京都サンガF.C.に勝ち点1ポイント差の2位につけている。そして、マリノスとの第2戦から中4日の12日には勝ち点53で並び、得失点差で柏が3ポイント上回っているヴィッセル神戸のホーム、ノエビアスタジアム神戸に乗り込む“6ポイントマッチ”が待っている。

 主戦場の3バックの中央で先発フル出場し、勝利に貢献する自身の姿を思い浮かべながら古賀が言う。

「本当に大事な試合になりますし、今シーズンはこういった大事な試合でなかなか勝ち切れていないのがいまのチームの現状なので。そこはしっかりと受け入れながら、それでも勝てばリーグ優勝に一歩近づく、という状況をエネルギーに変えて、チーム全体としていい雰囲気で臨みたいと思っています」

 京都と柏、神戸に鹿島、町田、サンフレッチェ広島を加えた6チームが、第27節終了時には勝ち点2ポイント差にひしめき合った今シーズン。しかし、5チームとの直接対決で柏は3分4敗と実はひとつも勝てていない。今月は前半戦で敗れた神戸だけでなく、引き分けた広島との一戦も待つ。決意を込めて古賀が続ける。

「9月をどのように終えるかで、自分たちが最終的にどの位置にいるのかを大きく左右すると思っているので、そこはしっかりと意識しながら臨みたい。天皇杯はああいう形で負けてしまいましたけど、ここまで来たら(ルヴァンカップとの)二冠を狙いたいし、そのためにも残り試合をすべて勝つつもりで戦っていきます」

 10月8日と12日の準決勝で川崎フロンターレと対戦するルヴァンカップと、12月6日の最終節で前半戦に大敗した町田へのリベンジを期すリーグ戦を合わせて、最大で残り13試合となった今シーズンをフルタイム出場で走りきる。その先に待つ歓喜の笑顔を思い浮かべながら、古賀は特に睡眠のルーティーンを守り抜いていく。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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