J1複数クラブ争奪戦勃発…逸材の苦悩「どれも魅力的」 ついに決断「将来を考えると」

横浜FM加入を決断した大津の村上慶「サイドバックとしてやっていきたい」
ユース年代における夏の全国大会は高体連のインターハイ、Jクラブや街クラブは日本クラブユース選手権。覇権を手にしたチーム、志半ばで敗れたチーム、全国にたどり着けなかったチーム。それぞれの思いを抱えながら、全国各地のフェスティバルや合宿で夏以降の捲土重来を誓う選手たちの思いを描く“真夏の挑戦者”シリーズ。
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第19回はインターハイ準優勝の大津のDF村上慶について。左右のサイドバック、センターバックとディフェンスラインならどこでもこなせる守備のユーティリティーは、ずっと悩んでいた進路をついに決めた――。
「正直、まだ悩んでいます」
インターハイ後の和倉ユースサッカー大会。金沢の地で苦しそうな表情を浮かべてこう口にした。
当然、高校からの進路は人生を左右するような重要な決断になる。高卒プロなのか、大学経由なのか。どのJクラブに行くのか、それとも海外かJか。大学でもどの大学に行くのか。多くの選択肢があるなかで、村上のなかでは高卒プロに行く覚悟はすでに固まっていた。
「僕が目指しているのは海外でプレーして活躍をすること。正直、高校入学時は高卒プロなんて全く考えていなくて、活躍していい大学に行って、そこからプロになろうと思っていましたし、それが無難だと思っていました。でも、大津に入ってから自分が建てていた未来設計を超えてくるスピードで自分が伸びていったし、周りの環境も、メンタル的な部分が大きく変わりました。今年の時点で大学は一切考えないで、プロ一本にしました」
1年時に左右のサイドバック、3バックのセンターバックをこなし、昨年はセンターバックに固定。今年は右サイドバックをメインにしながらも、試合中に左サイドバックに移るなど、最終ラインであれば3バック、4バックどちらでもどのポジションもハイレベルにこなす。
身長も182センチまで伸び、身体操作、フィジカル、心肺機能が高まった。「もともとスピードには自信がなかったのですが、高2あたりからどんどん足が速くなっているんです」と、本人も驚くほど高校入学時の自分から大きく変わった。
高さとスピードを兼ね揃え、守ってよし、組み立ててよし、攻めてもよしと、ずば抜けたセンスを誇る彼をJ1クラブが放っておくはずがなく、複数のJ1クラブの正式オファーが届いていた。彼はそのなかでどのクラブに行くのかを悩み続けていたのだった。
「本当はインターハイ前に決めて、すっきりした状態でインターハイに臨みたかったのですが、決めきれませんでした」
迷いを抱えながら夏のインターハイに挑んだが、この大会で彼が見せたプレーは出色のものだった。右サイドバックとして残り30メートルの守備のうまさを発揮。クロスのブロック、逆サイドからのクロスのクリア、縦や中への侵入を許さない守備を見せると、攻撃面では積極果敢なオーバーラップとインナーラップでチャンスを量産。最終ラインからボランチやトップ下の位置まで運び出すドリブル、ワンツーを入れながらの侵入。そして仕掛けると見せかけてのサイドチェンジやロングフィード。バリエーション豊かなプレーを、右だけではなく、左サイドバックにポジションを移しても披露していた。
結果は決勝で神村学園の前に2-2のPK戦の末に敗れ、惜しくも準優勝に終わったが、村上の存在感は際立っていた。
大会が終わり、もう一度自分の進路に真正面から向き合う時間が訪れた。冒頭で触れた通り、8月上旬のフェスティバルでもまだ答えが出ていなかった。
「オファーをいただいたクラブはどれもサッカーのレベルが高くて、スピード感があって、自分が成長するには最適の環境で、魅力的だと思っているので悩みます」
そしてプレミアリーグWEST後期開幕前に彼は決断を下した。選んだのはずっと熱心に声をかけ続けていた横浜F・マリノスだった。
横浜FMにとって左右両方のサイドバックができる選手はどうしても欲しい存在だった。シーズン途中で左サイドバックの永戸勝也がヴィッセル神戸に移籍をし、左利きの渡邉泰基はセンターバック起用が多く、加藤蓮が左右のサイドバックで起用されている状況を考えると、将来が期待される10代のサイドバックの加入は大きな意味を持つ。
「将来を考えると、このサイズはセンターバックとしては物足りなくて、世界的に見たらかなり小さい。だからこそ、より多くの力を出せるサイドバックとしてやっていきたい」
こう口にする彼の将来のビジョンとも一致した。サイドバックとしてプロの世界でさらに多く引き出しと、何でもできる能力を磨いて、日本を代表するようなサイドバックになることを思い描いている。
「サイドバックからゲームを作れる選手になるのが僕の目標です。サイドからどんどんボールを受けて組み立てたり、チャンスを作ったりして、ゲームの流れを作り出す存在になりたい。それに加えて、ゲームの流れだけではなく、チーム全体を攻撃的にできるスイッチを入れられる選手になりたい。全体をコントロールできるサイドバックになるためには、もっともっと努力が必要なことも分かっています。もっとボールの置き所や身体の使い方、ポジショニングなどトータルの部分で磨いていきたいと思っています」
(FOOTBALL ZONE編集部)




















